ミニマリストと電子書籍

ミニマムな生活にはあこがれがあるけれど、
ミニマリストはまた違うもののように感じている。
-イストの前提にある-イズムになじめ無さそう、とか。
あまり深く考えたことはないんだけれど。

ともあれ。
年末に美容院で美容師さん(30代男性、二人の子持ち)が、
家庭内ミニマリストしようかと思っている、とポロリと言った。
私も、本棚からあふれ出た本を電子書籍化して捨てたいよ、
と持参していたKindleを取り出して応じると、それいいっすね、と興味を示した。

余分なおしゃべりをしない彼が、それって家電店とかで売ってるんですか、どうやったら電子書籍をその中に入れられるんですか、と具体的に聞いてくる。が、なかなか彼の役に立つような答えがでてこない。さあ…、どうかなあ、端末はAmazonで買っちゃたし…、といった具合。

電子書籍も本屋で買えますか? との質問には、う~ん、どうだろう…と言葉に詰まった。そもそも電子本はオンラインショップで買うもの、という思い込みがあって、街の本屋で電子書籍を買う、という発想が無かったのだ。が、長らく本屋に足を運んでいない私は、絶対売っていない、とも断言できない。

なぜ彼が家電店や本屋に拘るのかというと、PCを持っていないからだ。ガラケーもネット利用なし。ネットショッピング?とんでもない!クレジットカード情報を打ち込むなんてもってのほか、インターネットなんて信用ならねえ!! という人なのだ。

そういうヤツは大人しく紙本買ってな、とは私は思わない。本屋で買えて、そこで端末に落としてくれたらいいのになあ、という彼の言葉に心の底から、そうだといいねえ、と同意した。

帰ってから、どうしたら彼が紙本を捨ててミニマム電子書籍ライフを享受できるか、少し考えた。まずリーダー端末は家電店で、なければ注文して取り寄せてもらう。あるいは友人に頼んでオンラインで買ってもらう。音楽を聴いたり、ゲームしたり、写真撮ったりできる7-8インチのタブレットのほうがお勧めかも、たとえネットしないにしても…、などとどんどんリアルになっていくシュミレーション。

これで家にある紙本は自炊業者に委託すれば、とりあえずのミニマム化ははかれる。

でもどうやって電子書籍を買う ? honto ではカード払い以外にもコンビニで購入したプリペイド電子マネー(ビットキャッシュ、WebMoney)で支払いができる。あとは、Wifiフリースポットで購入&ダウンロードすればいいか…。

それでも、電子書店でアカウントは作らなきゃいけないし、Wifiフリースポットを使うにも会員登録が必要だったりする。絶対避けて通れないのはメールアドレスの作成だ。これだけはネット嫌いの彼にも納得してもらって、YahooとかGoogleで取得してもらうしかない。

けれども、やっぱり彼、「本屋で気軽に現金で買えたらなあ…」と遠い目をするような気がしてならない。などとぼんやりしながらネットをぶらついていたら、昨春、本屋で電子書籍を売る試みがなされたという記事が目についた。

リアル書店で電子書籍のダウンロードカード販売「Booca」、3月から事業化 – ITmedia ニュース(2015.2.27)

本屋で買える電子書籍カードBooCa[ブッカ]はじまりました | BooCa × 今井書店

なあんだ。あるじゃん。今度おしえてあげよう。
でもこれ、よく読んでみるとほんの一部の取り組みで、広く全国規模で広がっているわけではない。楽天(kobo)がひきついでいるらしいが、扱っているリアル書店数があまりに少ない 。しかも書籍数も。これじゃおしえてあげてもほとんど意味はない。

せっかく、電子書籍販路の拡大、Amazon一強の打開、ユーザーメリットなどを打ち出した事業展開なれど、どうも順調なスタートとは言い難いようだ。

店頭での電子書籍販売サービス「BooCa」には、以下のようなメリットがある。

  • ネット決済に抵抗を持つシニア層などの、店頭で現金払いしたいというニーズに応える
  • 紙の書籍と同じような感覚で買える
  • 複数の書店による共同販売なので、ある書店がサービスを終了した後も他の書店に引き継げる

成長を続ける電子書籍市場だが、電子書籍は出版全体の1割にも満たないという。また、電子書籍の販売の8割が「漫画」で、小説などの読者の取り込みは不十分となっている。

書店で電子書籍販売を販売することで需要を拡大し、また、アマゾンがシェアの半分以上を占める電子書籍市場でのシェア獲得や書店支援にも繋げる。

三省堂や小学館など、100社を超える書店と出版社が共同で「店頭での電子書籍販売」に乗り出す!(IRORIO 2015.2.27)

と、メリットを謳っているけれど、ネットでは好意的な意見をあまり目にしない。一度買ってしまえば二度目からは自分でネットで買うようになるんじゃないかとか、今さらわざわざ本屋まで行ってデータ落としてもらうかね、といった感じだ。

私は必ずしもそうは思わない。本屋に行くのが苦にならない人、好きな人がいて、ネットで買うことが苦である人は、現にすぐ近くにもいたのだから。需要はあると思う。

問題はたぶん、このような(高齢者や美容師の彼のような)人たちに、電子書籍の良さや必要性が理解されていないことなのだ。高齢者は小さな文字が読みにくくなったとメガネ屋に行き、美容師君は部屋に本を増やしたくなくて図書館または貸本屋に行く。利益を享受する人にその利益情報が届いていないのだ。

Amazon一強の打開では、ドイツのTolinoについてのの朝日新聞記事を覚えている。国内書店が共同して電子書店を立ち上げ、書店で端末を利益なしの低価格で販売し、ついにシェアでAmazonを抜いたという話である。

 トリノの利用者は、キンドルよりも女性が多く、年齢層も上。書店に足を運ぶ「読書に積極的」な層に近い。とくに一度、電子書籍を購入した人が再び買う「リピート率」が高いという。

 トリノは2013年3月にサービスを開始し、現在は独立系書店も含めて20書店の計1500店舗が参加する。利用者数は350万人、扱っているタイトル数は180万に上り、毎月150万冊が売れるようになった。キンドルが寡占していた市場も一変。昨年の第3四半期にはキンドル39%、トリノ44%と逆転したと報じられた。

 ドイツには電子書籍にも価格拘束があるなど、日本の出版界とは環境が違う。視察団が「日本での実現は難しいのでは?」と尋ねると、レンケル氏はこう断言した。「『価格拘束の対象外だから』とあきらめて新しい試みをしないのは、『死ぬのが怖いから自殺する』というような考え方だ」

 ハンブルク市を中心に14店舗を展開する地元書店「クルト・ハイマン・ブックセンター」は昨年10月からトリノに参加。同社のクリスチャン・ハイマン社長は言う。「電子書籍を売ってもあまりもうからないが、いったんアマゾンでアカウントを作った客は、我々の店には戻ってこない。今いる客を逃がさないためにはトリノが必要だ」

キンドル抜いたドイツの電子書籍 書店大手が呉越同舟:朝日新聞デジタル(2015.10.16)

日本の書店どうしの連携にも、Tolinoの事例が参考にされているようである。知らなかったのだが、昨春hontoのDNP(大日本印刷、丸善やジュンク堂も傘下)と紀伊國屋書店が合弁会社を作っていた。当面それぞれのブランドは保持する方針らしいが、場合によってはhontoとKinoppyの統合もあるのかもしれない。
紀伊國屋とDNP、アマゾンに対抗する意図–大手書店グループのライバル両雄がタッグ(東洋経済on-line 2015.3.20)

いずれにも、電子書籍でAmazonやKoboに対抗するための手段としての連携や統合、という側面だけでなく、リアル書店と電子書籍店双方の生き残りのために、という意味合いがある。街の繁華街に何件かは、紙本と電子書籍の両方が買える本屋があったらいいのに、と確かに思う。で、書店店頭では、ドイツのように(できれば汎用の)電子ペーパー端末も売ってほしい。

【その他の参考記事】
始まるか、電子図書館「仁義なき戦い」–新展開を迎えた日本の電子書籍(Cnet Japan 2015.4.17)
2014年度 電子書籍コンテンツ市場動向調査(ict総研)

そう、あとは電子図書館ね。
でも引用記事の大半が昨年の春のもの。
その後の動きはどうなのさ。

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