電子書籍の著作権&販売者保護 vs 購買者の権利について

これまでに買った電子書籍を全部電子ペーパーで読みたい、
というささやかな希望について、および、
著作権保護と購買者の権利保障についての若干の考察。

(12月26日追記。同27日、28日に一部追加削除訂正など。)

著作権&販売者保護 vs 購買者の権利保障

電子書籍をあちこちの電子書店で買い散らかしているのは、私だけではないだろう。紙本だってあちこちで買う。その感覚のままなのだ。キャンペーンやらポイントやらついでやら、購買者にはその時その時に様々な事情がある。品揃えだけでなく、気分や店の雰囲気や店員の態度や、そういったことも大きい。これは電子書店だって同じである。

これでは、PC(あるいはクラウド)上の「本棚」はあちこちに散らばり、このまま本の数が増えていくとどこに何があるのか混乱しそうである。まだそれぞれの書店では一けた台の書籍数の私が、すでにこの混乱状態なのだ。何故か、昔買った記憶のある本がどの「本棚」にもない。 何かの折に削除されたか(したか)、ダウンロード期限が切れたか…。

やっと昨夜理由が判明した。Kinoppyで二つアカウントを作ってしまっていて、昔の本はそちらの「本棚」にあった。一度読んでしまえばもう読まない類の本ではあったけれど。

さてさて、Kindleで電子書籍を読み始めた今、これらの本を(なるべくなら一台の)電子ペーパー端末で読みたい、というささやかな望みが芽生えるのは自然のなりゆきである。これにはいくつか方法がある。

★一番いいのは(必要なら)フォーマットを変換して、電子書籍データとしてそのまま端末に持っていくことである。が、これには著作権保護(DRM)を解除しなければならず、違法である。

このDRMロック、必要性はわかるけれど、読者にとってのデメリットが結構大きい。私の不満はなんといっても他の端末で読めないことと、文字列をコピーできないこと。紙本と同じく、引用したくても手動タイプするしかない。せっかくのテキストデータが目の前にあるってのに、長文をタイプするのは苦役である。その必要がでてきたときは(ブログの読書感想文とか)、キャプチャするしかない。が、それでうまく記事に収まるかどうか(電子書籍やリーダーアプリによっては PrtScn ボタンが効かない場合もある)。

あとは先に書いたようにデータ管理の問題(これには管理ソフトがある。一つ試してみたけれどイマイチであった)。

ちなみに、出版社や書店によってはDRMフリーで電子書籍を販売している。ほぼ全てが専門書なので一般読者にはあまり恩恵は無いが、このあたりの記事を読んでいて、著作権保護にDRMではなく、購入者データを電子書籍に埋め込むという方法があることを知った。これなら購入者本人(及び家族程度)以外への配布を防ぐ目的は達成され、購買者は自分使用(仕様)に限ってデータを利用できる。著作者と販売者の権利だけでなく、購買者の権利をも保障するこの方式、なかなかいいと思うんだけどなあ(電子書籍の普及のためにも)。

というふうに意識と方策が変わっていかない限り、違法を覚悟でDRMを解除する人は減らないだろうし、以下のキャプチャ画像変換による「自炊」も無くならないだろう。

★次に、PCのリーダー画面をキャプチャし、別途電子書籍データを作るという方法。通常紙本をスキャンして電子書籍データにする作業を「自炊」と呼んでいるけれど、これも広義の「自炊」である。

紙本の「自炊」は個人利用目的であれば著作権侵害とはみなされない。が、これを代行する業者に対しては昨年違法判決が出た(控訴したのかどうか、その後の話は分からないけれど、代行業者はなくなっていない)。
「全部自分でスキャンしろってこと?」 自炊代行「敗訴判決」に利用者から怒りの声(弁護士ドットコムNews 2014.10.24)
「スキャン代行」はなぜいけない?(福井健策弁護士ロングインタビュー:eBook User 2011.12.23)

気になるのは電子書籍のキャプチャ(スクリーンショット)による「自炊」である。これも紙本と同じく、個人利用であれば合法と考えていいのだろうか。この点については明確な判断がなされていないように思う。電子書籍は紙本のようにコンテンツを買うのではなく、読書権を買うものだとされており、これをどう考えるかの議論があまりされていないようなのだ。

読書権というのであればそれは半永久的貸本なわけで、であるにしては、現行の料金体系や販売方法はコンテンツ販売に限りなく近い。買う側も(ほとんどは)同じ内容で媒体が異なるだけと捉えているのではないか。ゆえに、個人的には、キャプチャによるコピーも個人利用である限り、著作権違反には当たらないという解釈が妥当だと思う。思うけれど、微妙な部分もある。

実はリーダーを起動していると、PrtScnボタンが効かなかったりする。キャプチャも制限されているのだ。Snipping Tool も電子書籍によっては使えない場合もあるようだ。このキャプチャ、紙本コピーの感覚で必要となる場面ってあるよね。でも、キャプチャにも制限をかけるというのは、販売側に「とことんコピーを制限するぞ」という意志があるということ。が、そもそもこれを著作権保護といえるのかどうか(販売条件に合意して購入した場合の違反行為ではあるけれど)。個人使用を超えた著作権保護を目的としたものとはいえ、過度な売り手保護、すなわち購買者権利に対する過度な制限と取ることもできる。

キャプチャによるコピー、以下に必要ソフトと簡単な手順を紹介するけれど、上記の問題点があることは考慮しておいてほしい。(実際、スクリーンショットからコピーデータを作成するソフト販売業者が著作権違反で逮捕される事件もあった)。

まずはワンクリックでキャプチャ+.jpg画像を自動連番で保存する。
KIOKU
参考/【KIOKU】スクリーンショットのフリーソフト KIOKUの全般設定
ブログにSSを載せよう♪~KIOKUの使い方~

この作業を繰り返し自動で行う。
RocketMousePro(試用期間は10回繰り返しまで)

自動保存した.jpg画像を.mobiファイルに一括変換。
このとき余分な余白も削除できる。
ChainLPの使い方:インストールから始める電子書籍の最適化事例

全般の参考
amazon以外で配布されている電子漫画をkindleで読みたい

Kindle形式の電子書籍(.mobi)を手動でデバイスへ転送してプレビューする方法

電子書籍ファイルをKindleに転送する方法 – 小鳥社

Amazon.co.jp ヘルプ: Kindleパーソナル・ドキュメントサービス

★ 他の方法としては、前回も書いたけれど、Android を搭載した電子ペーパー汎用端末で、各書店のリーダーアプリを利用して読むこと。手間いらずで違法性もない。もしまだ専用端末を買っていなかったらこれが一番おすすめかも。専用端末は販売者には購買者を囲い込めるメリットはあれど、購買者にとっては囲い込まれることは必ずしもメリットではないのだから。ある特定の書店でのみ買うとして、専用端末でしか読めないから、ではなく、(先に述べたように)サービスその他のメリットやこちらの事情によって判断したい、ということである。

調べた限りでは、中国のメーカー二社がこのタイプの端末を出している。Amazonで販売しているが、並行輸入品となり、専用端末に比べて割高である。サポートその他の不安もある。ここは同程度の販売額でも良いから、是非日本メーカーにも電子ペーパー汎用端末を売ってほしい(電子書籍の普及のためにも)。

BoyueT62D【並行輸入品】
(アプリ:GooglePlay 非対応、apk経由または他の方法で)

・BooxC67ML(carta版) [並行輸入品]
(アプリ:GooglePlay 対応)(販売終了か。後継機は下記参照)

※ 2016.1.4
BOOXC67MLcarta2 が発売となった模様。解像度は300dpiになった。
BooxC67MLCarta2 [並行輸入品](ショップ:Amazon)

【参考サイト】
BooxC67MLCarta2を検証するよ!(電子書籍アプリ編)
(チューリップ商人のブログ 2016.1.3)

専用端末を汎用端末にすることは難しいことではない(らしい)。現にkoboやReaderの端末を自作でAndroid化している人たちがいる。内蔵のSDカードに書き込むプログラム?も公開されているので、それを(場合によっては別の)SDカードに書き込んで差し替えるだけである。たぶん私にも出来るだろう。

ということで、一瞬これも考えてみた。思いとどまったのは、どうせ新たにもうひとつ端末を買うのなら、(Kindle Paperwhite を買ったばかりなので少し時間を置いて)中国製の最新の汎用端末を買うほうがリスクが少ないし、安定性(使い勝手)も高いだろう、という判断である。

でも、SONYのReader端末、二年前のなのに性能いいなあ。今だに2015年版の他社製と並べて売れるくらいで、実際購入も可能。値崩れもしていない。ReaderはReaderだけでなくKinoppyもパブリも読めるし、ついでにhontoのも読めるんだったら、個人的には買いなんだけどなあ。hontoにリクエストしてみるか。 いや、SONYが汎用にして売ってくれればそれが一番。結局前回記事と結論変わらず。

追記 12/26~28

hontoにリクエストしてみた。
とにかく希望は電子ペーパー端末で読みたい、ということだけである。別にSONY Reader でなくてもいいんだけれど、手持ちの電子書籍(Kindle 以外)がhonto、Reader、kinoppy なので、あとは honto さえReaderに対応してくれるなら、いいでしょう、Reader端末買いましょう(で、電子書籍もhontoで買いましょう)、ということなのだ。さすがにKindle一台で読みたい、読めるようにしてくれ、とは言わない。

回答は予想通り、今後の対応は未定とのこと。そしてこれも予想通り、要望については社内で検討を重ねます、との結語。本好きの要望、大事にしてくださいね。技術はそこに転がってるんだし、Amazonに対抗する意味でも、日本の電子書籍店が連携して日本の端末メーカーと手を組むの、いいと思う。

しかもこれによって(違法)コピー数が減る。少なくとも、自分のためだけにDRM解除したり、電子本から「自炊」している本好きの人たちの作業は減る(彼らは元々、文字サイズ変更その他、電子書籍の利便性を十全に享受できる正規データで読みたいはずだ)。つまり、「自炊」の手間ヒマエネルギーが読書にあてられるようになり、電子書籍販売増加となる(たぶん)。

電子書籍のデータ管理が販売元だけに限られることに関して、重大な問題点を指摘する記事があった。
消えかけている電子書籍を後世に残すための戦い(Gigazine 2014.5.25)

これは考えなかった。電子書籍には紙本のように絶版もないので、データ保存上大きなメリットがあると思っていた。が、現行の方策では、電子書籍ゆえにこの世から消滅する可能性がでてくる。これは絶版よりはるかにその本にとって悲劇である。

出版当時全く評価されなかった書籍も、後に大きな評価を得る場合がある(映画監督のエド・ウッドの手になるポルノ小説が例として挙げられている)。彼の小説は紙の本であったがゆえに残り、後に貴重な作品として保存されることになった。もしこれがコピープロテクトをかけられた電子書籍のみの出版で、販売元が残す必要なしと判断したら、あるいは販売元がつぶれてしまったら…。皮肉なことにこの場合、生き残る本は(違法)コピーされていた本のみ、ということになりかねない。

違法コピーを擁護しているのではない。現行のコピープロテクトを護持するというのなら、電子書籍を後世に残すためにはこのような落とし穴的リスクを補完する措置をとるべきだし、そのためにも購買者の管理権をもう少し広げる必要もあるのではないか、と思ったのである(それにしても、Amazon一強の怖さよ!)。

そもそも、書かれて世に出たものは作者や出版社だけのものではない。もちろん著作権は最大限に尊重されるべきだし、書き手へのリターンはきちんとなされなければならない。けれども、エド・ウッド監督の本が生き延びるためには、紙という媒体の特性だけではなく、その本を愛し、大事に思う読者の存在が不可欠なのだ。本が本として成立するには、書く人と読む人(所持する人)の双方がいなければならない。

電子書籍で購入するのはコンテンツではなく「読む権利」なのだと規定し、強力なコピーガードを施したとき、書き手と読み手のこの幸福な関係も変容してしまった。これを安易に、コピーして不法販売できるデジタルデータの宿命だ、とすべきではない。何故なら、デジタルデータであろうと印刷された文字列であろうと、その「本」を愛し、大事にし、保持したいと思う読み手の意識は同じだからだ。

違法コピー販売者から作者と正規販売者を保護するためのバトルの狭間で、読者という購買者の権利がないがしろにされるとき、悲劇的な運命をたどるのは誰でもないその「本」そのものである。「本」の最大の擁護者は、おそらくは作者でもなく、販売者でもない。読者である。何故なら、その「本」を生み出した作者はいつかこの世から姿を消すけれど、読者はその「本」が消えない限り保持し続け、愛し、感想を語り続け、友人や子供に(あるいはBookOffに)譲り、新たな読者を生み続けていくのだから。

  • トップへ戻る
  • カテゴリアーカイブ
  • HOME

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。* は必須項目です。


*


*