島田雅彦『ミス・サハラを探して -チュニジア紀行』 

続けて旅の本。
島田雅彦がサハラ?
意外な組み合わせのような気がする。
似合わないような気がする。
が、これは勝手な私の思い込みだろう。

読み始めてすぐ、出版年を確認する。1998年。初出は97年。
ということは、旅をしたときの著者の年齢は36-37歳。
旅には、年齢が大きくかかわっている。
旅人が何歳であるのかによって、旅はまったく異なったものとなる。
それは『旅する力』で、沢木耕太郎もすばらしい例をあげて描いている。
ここで紹介はしないけれど。

もちろん、この本を手に取ったのは、
場所がチュニジア~サハラ砂漠だったからだ。
パリやロンドンなら、目にとまらなかっただろう。

この本は写真が半分で、なかなか美しい砂漠の写真が載っている。
けれども、写真家中島誠氏の名は、表紙、背表紙にはない。
あくまで島田雅彦の紀行文であるということなのだろう。

沢木耕太郎もそうだけれど、島田雅彦の文章も、
まことにさらさらと流れが良い。加えてほどよい軽みがある。
まさに、砂漠の砂の流れの如き。
そのためと写真の多さもあって、あっというまに読了。

彼のチュニジアの旅のテーマは、「怠惰」である。
「倦怠」が最初から目的化しているのである。
なるほど、ある程度の年齢に達し、ある程度のことを成し遂げ、
虚無より充溢がバランスで勝っているような旅人は、
「怠惰」を楽しむという贅沢な「旅」ができる。
これもまた「取り返しのつかない旅」ではある。
その年齢と、その場所との、一瞬の交差。

砂漠の砂交じりの、それなりに厳しかったであろう旅が、
著者の描写になると、不思議に軽いものになっている。
これはこれで興味深い。
旅とは、ありきたりの予想を裏切るところに、その本質があるのだから。

  • トップへ戻る
  • カテゴリアーカイブ
  • HOME

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。* は必須項目です。


*


*