エジプト 火に油?

燃えさかる火を消すのには三つの方法がある。
水などで燃焼物を冷却し、熱源を取り除くこと、
消火剤その他で燃焼に必要な酸素を断つこと、
そして可燃物質そのものを取り除くこと。

暫定政権は(同胞団の)炎をあげる反政府感情と行動に、
三つめのやりかたで対処しようとでもいうのだろうか。
しかも、可燃物を一気に焼きつくすべく、火に油を注ぐ形で。
だがそれは、火種をあちこちに飛ばし、
あるいはマグマ化して地下に押し込めるだけではないのか。

「同胞団の解散は解決ではない」と題するアラビア語紙の論説
(al quds al arabi net 8/18 「中東の窓」による要約から」

現在エジプトの軍事、政治エリートには2つの選択肢しかなく、第3の道はない。
1つめの道はエジプト社会に深く根を下ろした同胞団の存在を認め、合理的かつ現実的な解決を模索することである。
もう一つは軍事的解決の道をひた走ることである。
この場合、それがもたらす政治的、社会的、経済的傷は深く、その影響はエジプトにとどまらず、中東全域に及ぶであろう。
同胞団の解散は解決ではなく、エジプトを破壊させる深い傷をもたらすであろう。

エジプト当局、ムスリム同胞団の最高指導者を逮捕 (ロイター 8/20)
エジプトのムバラク元大統領、保釈を認められるも別事件で勾留は継続
(AFP BB ニュース 8/20)
・キリスト教徒 襲撃相次ぐ エジプト・イスラム急進派の標的
(東京新聞 8/20)
武装集団、治安部隊襲う…エジプト死者900人
(YOMIURI ONLINE 8/19)
・エジプトのマラウィ博物館、前例ない丸ごと略奪 (スポーツ報知 8/20)

中東かわら版(中東調査会 8/19)は、今後の展望として、
さらに激化する可能性もある、と分析している。
根拠は次の四点(要約)。

  1. 両者一歩もゆずらず対立姿勢を強化している
  2. 軍・暫定政権に対する国民の支持が厚い
    ・安全な生活の復活を望んでいる(デモや座り込みに嫌気?)
    ・国営メディア等による同胞団=テロ組織キャンペーンが奏功
    ・軍・暫定政権に対する評価が政治勢力間で分裂
    (4月6日運動、ヌール党、革命社会主義者は政権の暴力過剰使用を非難。
    一方、多くのリベラル派政党は同胞団の解散と取り締まりを支持)
  3. アメリカが軍に対する援助の停止・削減に踏み切る可能性は低い
  4. 同胞団の非合法化が政治活動だけでなく社会慈善活動にも及んだ場合、
    ダメージの大きさから分裂し、急進派が過激化する可能性がある

3 の援助については、EUは踏み切るかもしれない。
ただし、サウジアラビアが補てんすると言っているので、
経済制裁の意味はないし、自国の利にもならない。
サウジ、西側が対エジプト支援停止なら補う用意=外相 (ロイター8/20)

エジプトと米国、対立は不可避 (WSJ 8/19)では、
米では軍に対する批判が強まっているとし、共和党議員の、
「米国がエジプトとの対話を保ちつつ、
同国に対する援助を「再調整」すべきだ」との意見を挙げている。
が、対話(影響力)を保ちつつ援助を打ち切るなどということが可能だとは、
だれも思わないだろう。

けれども18日、この動きがあった。
はじめて同胞団側がデモを中止したのだ。
安全確保のためと他紙には出ていたが、
暫定政権側との交渉のサインと見る専門家もいるという。
そうであってほしい。
エジプト:治安部隊が同胞団の地方本部を襲撃、ムルスィー派のデモをかく乱
(アル=ハヤート 8/19 日本語で読む中東メディア)

 

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