エジプト 治安は回復したのか、暫定政権と同胞団の動き

エジプトのその後はどうなっているだろう。
9月半ばにも解除するといわれていた非常事態宣言は、
さらに二か月延長された。
ただし、夜間外出禁止令は21日土曜日から緩和されたもよう。
「夜間外出禁止令が出されている地域の禁止時間を
深夜12時から午前5時までに短縮。
ただし、金曜日は午後7時から翌日の午前5時」
エジプト治安情勢 (中東の窓 9/20)

また、外務省の危険情報も、「渡航の延期をお勧めします」に引き下げられた。

以下、憲法改定、デモやテロ、治安をめぐって、
その他目についたニュースをメモ。

9月に入り、新憲法制定の動きが進んでいる。
50人からなる憲法改定委員会では、参加しているヌール党など、
「イスラム的性格」条項を入れることに固執しているが、
どうまとまっていくのか。
エジプト:同胞団とその同盟者は憲法改正の戦いから姿を消す
(2013年09月02日付 al-Hayat紙)

8日には第1回会合で、アムル・ムーサ氏が議長に選定された。
氏は元外相でアラブ連盟事務局長であった。
憲法改定50人委員会議長の選出(エジプト) (アラブの窓 9/9)

50人委員会は、暫定政権を組織した工程表では2月以内に、改定草案を確定し、国民投票にかけることになっていましたが、ムーサはある意味で典型的な世俗派のエジプト人インテリで、改定憲法草案の方向を示唆する感じがします。

先週の13日と14日に「殉教者への忠誠の日」抗議デモが、
カイロやその他地方都市で行われた。
デモは、開始時間をまちまちにするなどの新戦術がとられているという。
そういえば、地下鉄占拠デモというのも行われ、
利用客の反発をかっているらしい。
これは一枚の切符で延々と乗り続けるというもので、
同胞団がアルバイト代を払って動員しているとのこと。
が、その後、混乱計画は失敗したとするニュースもある。
同胞団の「新戦術」には次のようなものも。
同胞団の新戦術(エジプト)? (中東の窓 9/17)

16日付のal arabiya net は、同胞団系のネットが、市民不服従の新戦術として17日、皆がガソリンステーションに押し掛け、5リットルだけ給油して、又出ては戻って5リットル給油 すると言う方法で、交通をマヒさせて抗議の意を表そうと呼び掛けていると報じています。

実際行われたのかどうかも不明。
平和的なのはいいけれど、迷惑の割に効果は期待できず、
かえって市民の反発を招くと思うんだけれど。

一方、各大学の新学期が始まり、大学構内などで同胞団系のデモが行われ、
少数ながら逮捕者も出ている、という話もあった。

注視すべきは、暫定政権の過剰な同胞団取り締まりと、
弾圧に押し出されるように発生する過激事件だろう。
エジプトとハマスの敵対関係 (中東の窓 9/16)

エジプトのクーデター後現政権はガザを支配するハマス(昔のパレスチナの同胞団の後継者)がムルシ―及び同胞団を支持していること、さらに北シナイでイスラム過激派のテロにも関係しているとして非難してきました(ハマスは勿論否定し、エジプトの内政には関係しないと主張しているが)が、ここにきて双方の関係は更に悪化してきたようで、又北シナイにおける過激派に対する掃討作戦は今後も継続されるとのことで、ハマスの関与の可能性はともかく、テロ対策と言う 観点からはとりえずこの問題がエジプトにとって最重要の課題であるように思われます。

はじめて知ったのだが、8/14日のムルシ派デモに対する武力制圧後、
一ヶ月にわたり、同胞団の武装支持者によって、
ミニヤ県(カイロから300km南)ダイル・マワース郡のダルガー
という人口12万人の村が占拠されていたという。
占拠の内実はよくわからないが、9/16日、軍が急襲、
さしたる抵抗もなく制圧したとのこと、
エジプト:軍は「同胞団」の占拠していた村を攻撃 (al-Hayat紙 9/17)

19日、カイロ郊外のギザ(Giza)のピラミッド近く、
ケルダサ(Kerdassah)村の場合は治安部隊が突入、
警察署への放火や治安部隊11人殺害の容疑者を逮捕するため、
とのことだったが、銃撃戦になり55人が逮捕され、治安部隊に死者1名が出た。
また、エジプト中部の都市デルガ(Delga)でも、
16日に同様の作戦が実行されていたという。
軍と警察がカイロ郊外の村を急襲、「テロリスト一掃が目的」(AFP=時事 9/19)

当局はケルダサ村に日中の外出禁止令を出し、指名手配している140人の容疑者を追って、村内の家を1軒ずつ捜索した。作戦実行の様子はテレビで放映され、濃く立ち込める催涙ガスや村内を動き回る軍と警察の車両が映し出された。

これら一連の動きは、暫定政権が同胞団との歩み寄りではなく、
対決姿勢を一層露わにしたもの、と見ることができる。
9/3日には軍事法廷が、武力襲撃した同胞団員52名に、
死刑一名を含む有罪判決を宣告している。
エジプト、ムスリム同胞団メンバー52人に (AFP BBNews 9/4)

大統領選にからむニュースも流れてきている。
シーシが次期大統領でーす、という乗りのエジプト (中東TODAY 9/20)
<エジプト>甘い関係? シシ国防相のチョコ、富裕層に人気 (毎日新聞 9/21)

文民大統領になってほしいけれど、ムバラク政権時の復活も疑問だし。
しかし、シーシ・サンド、シーシ・クッキー、シーシ・チョコ…。
ハーン・ハリーリのエジプト土産、ピラミッド・チョコを思い出すわ。
本人は大統領選出馬を否定しているみたいだけれど、さて……。
エジプト情勢(21日~) (中東の窓 9/23)

・エジプト大統領選挙の前哨戦は既に始まっている。
・21日元国家情報副局長hisam khair allahが出馬の意図を表明した。
彼は前回の大統領選挙にも出馬したが、得票率は低かった。
・ エジプト軍報道官は、シャフィク(ムバラク時代の最後の首相で、前回大統領選挙で決選投票に残ったと記憶している)とsami anan がエジプトの個人として出馬する自由を有していると発言したが、2人とも旧体制とのつながりが強すぎるということで、無理との見方が強い。
・他方エジプトのマスコミは、救国戦線の間でhamadin sabahiが有力な候補として浮上していると伝えている。
・ 同じくマスコミは、イスラム主義者の間ではabdelmunaim abu al fetouh(確か当初同胞団が大統領選に候補者を出さないとした時に、同胞団から離れて立候補した人物、同胞団の若手や穏健派に人気があったとされる) とsalim alawah の2名で、彼らは連日のようにイスラム聖職者会議のあるカルダウィと会談していることもあり、非公式の同胞団候補の可能性があるとされる由。
しかし、エジプトでのイスラム主義の影響力の低下、およびサラフィー主義の光の党がイスラム主義者の候補に反対するとしたことから、彼らの可能性は低いと見られている由。

【その他】
エジプトの最低賃金(公企業等) (中東の窓 9/19)
カタールの支援「不要」=関係悪化象徴か―エジプト (時事通信 9/20)

 

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