イタリアの移民・難民問題 ワイン、ファッション、トマト畑

年明け早々、またも地中海をイタリアに渡る難民船救出のニュースがあった。
冬の地中海は波も荒く、航海のオフシーズンなのに…。

そして後半は、そんな難民や移民が働くイタリアの労働現場の話。

イタリア海軍:移民・難民1056人、地中海上で救出
(毎日新聞 2014.1.4)

海軍はイタリア最南端ランペドゥーサ島沖で4隻のボートにすし詰めになっていた823人を上空からヘリコプターで発見した。ロイター通信によると、国籍はエジプト、パキスタン、イラク、チュニジアなど。ANSA通信によると、女性23人、子ども46人が含まれていた。

また、海軍は別のボートに乗っていた233人をフリゲート艦でシチリア島のシラクサ港に移送した。エリトリア、ナイジェリア、ソマリア、ザンビア、マリ、パキスタンから地中海経由で欧州入りを目指していた。

イタリアは、国をまたいでの移動に制限のないEUや、
シェンゲン協定国からの移民問題も抱えている。
彼らの労働の実態(の一部)を伝える記事を今日読んだ。
イタリア: ワイン労働者の窮状、奴隷のような条件下で作られた有名ブランド
(International Business Times 2014.1.6)

以下は、北イタリアはピエモンテ州、
バローロなどイタリア有数の高級ワインの産地の話である。

地元メディアが「恥の収穫」と呼ぶ事態もカネッリでは発生している。低賃金を考えると、カネッリの多くの労働者は晩夏か初秋の収穫シーズンに部屋を借りる余裕はない。多くの労働者は、他人と、車やトラックを共有しテント生活をする。南イタリアのこの状態はアフリカのトマト収穫者に似ているが(この部分、訳がおかしいのでは? 正しくは、「この状態は南イタリアのアフリカ系移民のトマト収穫者に似ているが」、では?)高級ワインの生産は高利益率の豪華な産業とされているため実情はほとんど知られていない。

12台~14台のバスが500人~600人の労働者を降ろす。ブルガリア、マケドニア、ルーマニアからカネッリに季節ごとにやってくる労働者である。ガブシ市長によると、地域と関連を持つ者は10人に1人で、大半は他所からやってきた人で適切な住居もないと言う。住宅の欠如はカネッリの 「スラム街化」につながっている。労働者たちはテントや一時しのぎの兵舎で収穫の季節を暮らす。市はシャワー1つと、化学式トイレ2つを提供した。

かつてカネッリにホームレスは珍しかった。車やベンチで寝泊りしているのはわずかな労働者だけだった。現在、カネッリには約100人が居住するスラム街がある。モッシノさん(NGOグループ代表)は、十分な設備をブドウ園の労働者に提供することは、企業ではなく、地方自治体の責務であると付け加えた。「ここに億万長者となれる生産者がいる。わずか2万~3万ユーロ(280万~430万円)で住宅設備を供給すれば協力し合える。『恥の収穫』を『公正な収穫』に変える素晴らしい公共投資になる」とモッシノさんは語った。

加えて不法滞在の難民。
海を渡ってきた難民たちは、多くはイタリアを玄関口に、
難民対策の進んだ北ヨーロッパを目指すというけれど、イタリアに残る難民もいる。

日雇い労働者のためのぞっとするような条件は、移住者がトマトや果物を収穫してきた南イタリアでは数十年前から知られていた。約4年前、イタリア南部のカラブリア州ロザルノで、出稼ぎ労働者と地元の人々の間で人種的な衝突が発生し国際社会の注目を集めた。そこでは1,000人以上の移民が水道も電気もないスラム街に住んでいる。主にアフリカからの移民労働者が地域に散在する放棄された農家などで暮らしている。彼らの賃金は時給1ユーロ(約140円)程度で、この地域で売られている水の入った小さなボトルの半分という低賃金である。

東ヨーロッパからやってくるブドウ収穫/ワイン製造従事労働者は、
イタリアの最低賃金(時給7ユーロ)の半分以下の2~3ユーロで働くが、
アフリカ系難民はさらにその半分の賃金である。

南イタリアのトマト収穫の話は以前から聞いていたが、
ブドウ収穫とワイン製造現場にも同じ構造があると初めて知った。
記事ではフィレンツェにも近いプラトという古くから繊維産業で有名な街の、
中国人不法滞在者による衣類製造現場の惨状も報告されている。
これは、『ある海辺の詩人』に描き出された問題で、
イタリアでは、すでに移民や難民による労働が、
社会の下部構造に深く根を張っていることを物語っている。
ゆえにNGOの活動もあり、行政も動かざるを得なくなっているのだと思う。

モッシノさんのNGOグループはイタリア最大の労働組合と共に、出稼ぎ労働者の搾取に反対する国家計画を立ち上げるようイタリア政府に要請した。一部の出稼ぎ日雇い労働者は、夏野菜の収穫のために南イタリアを移動し、ブドウの収穫のために北イタリアに向かい、冬のオレンジのシーズンには再び南下するという遊牧民のような生活をしている。イタリア三大労働組合と言われる、イタリア労働総同盟(CGIL)、イタリア労働組合連盟(CISL)、イタリア労働同盟(UIL)によると、イタリアでは100万人以上がこのような生活をしており、その影響は国のGDP(国内総生産)の最大17.6%を占めるとい う。

イタリアの農業省は、これらの非正規労働者のための情報キャンペーンを開始し、違法な労働条件の規制強化に着手した。モッシノさんら活動家は、時にイタリア語も話せず非協力的な場合もある労働者の労働時間や契約事項の順守などをチェックして、ブドウの収穫を規制することは困難だと言う。

押し寄せる移民・難民労働者に買い手市場は、自国民の失業率を押し上げる。
移民排斥論も高まるが、劣悪な労働・生活環境や搾取の現状に、
移民や難民たちの不満や反発も高まるし、治安の問題も高まる。

一方で、今日はこんなニュースもあって、少し明るい気持ちになった。
イタリア:アフリカとの関係強化 成長取り込み狙い (毎日新聞2014.1.6)

イタリアが地中海をはさんで対岸に位置するアフリカ大陸との関係強化に乗り出した。高度経済成長が予想されるアフリカ諸国と政治、経済、文化面で協力を推進し、アフリカの発展をイタリアの景気回復につなげたい考えだ。また、女性の地位向上や民主化、人権状況の改善などを後押しし、アフリカの治安・政情の安定を目指す。

イタリアはアフリカ諸国の潜在力に注目している。人口増加率は平均年間2・3%。国際通貨基金(IMF)の予測では、11〜15年に世界で高度成長が見込まれる10カ国のうち7カ国がエチオピア、モザンビーク、タンザニアなどのサハラ砂漠以南のアフリカに集中している。

また、イタリアにとってアフリカは自国の安全保障上、極めて重要だ。地中海に浮かぶイタリア最南端ランペドゥーサ島にはアフリカから移民や難民が殺到しており、政府や地元自治体は対応に苦慮している。流入に歯止めをかけるには、移民・難民の出身国の政治・経済の安定が不可欠だ。

難民にはテロリストが紛れ込んでいる可能性もあるので、
その意味でも安全保障になるとのこと。
イタリア経済の活性化とイタリア社会の安定、
そしてアフリカ地域の安定・発展と三方両得の話だけれど、
ただ強制送還するだけでは問題は何も解決しないのだから、
時間はかかるだろうけれど、もうこれしかないという方策だとは思う。
結局格差があれば、水と違って人は高きに流れるのだ。
その高低差を、低きを底上げして穏やかなものにすること。

以下の関連記事もご参照ください。

  アーカイブ:移民・難民問題

  • トップへ戻る
  • カテゴリアーカイブ
  • HOME

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。* は必須項目です。


*


*