ウソの上の国会、ウソの上の内閣 — 「森友学園」書類改ざんは自衛隊日報隠しとおなじ

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「森友学園問題」では一年前に、不正土地取引疑惑だけではなく、
もっと本質的な問題があるだろうと書いた。
疑惑がこのように報じられなかったら学園は開校していたかもしれない、
そのことの問題性があまりに報じられないのが不思議だったのだ。

「森友学園」で怖いのは、疑惑(不正)がなければ開校していただろうということ

なぜ、安部総理は自らの、あるいは夫人の関与をなかったことにしたいのか。なかったことにしたいのは、政権トップとその家族がとある幼稚園の新設に便宜供与を計ったということだけではなく(それも大きいが)、どのような学園を応援していたか、ということでもあろう。

国会の証人喚問で籠池氏は、昭恵夫人秘書からのFAXを示した。籠池氏の要望に従って経産省に問い合せた、その回答に関するものだった。だが政権は夫人の関与を否定し、秘書はその後海外勤務に栄転という形で遠ざけられた。

その後加計学園の獣医学部認可では、官邸の圧力があったという文科省からの内部告発まで飛び出し、森友より更に深い便宜供与が問題化したのに、解散・総選挙→自民圧勝で逃げ切られた感があった。

このままうやむやにされてしまうのかと危ぶんでいたところ、「朝日はフェイク」と政権によってマイナスイメージキャンペーンを張られていた朝日新聞が、3月2日に改ざん疑惑をスクープした。これで事態が動いた。今現在も動いている。そのことについてのコメントを上記記事に書いていたのだけれど、長くなりそうなのでこちらに書くことにする。

加計学園と森友学園では、安部総理・政権の、相手に対する態度が180度異なっている。加計氏はかばわれ、籠池氏は懲罰的な国会証人喚問ののち逮捕され、長期拘留されたままだ(すでに7か月超という異様さ)。総理は公の場で、かつて応援していた人を詐欺師呼ばわりまでしている。

昭恵夫人ともども自分たちは騙されたのだ、利用されたのだと言いたいのかもしれない。けれども、夫人が名誉校長まで勤め、講演し、100万円寄付し(籠池氏談)、新設幼稚園に安部晋三記念幼稚園という命名まで考えらていたという事実を、忘れてはいけない。籠池氏の「愛国教育」に、日本会議や総理及び総理夫人が賛同支援していたということである。

少なくとも加計学園には、地域に獣医学部が少ないからとかなんとか、新設によって国民に利益があるのだ、と言い張ることはできた。これが森友学園にはない。

森本学園の決済文書からは、昭恵夫人や麻生大臣他政治家の名前が削られていた。もうひとつ注目すべきは、日本会議という安部政権を支える右派宗教政治団体名と、籠池氏や安部首相と日本会議の関係に触れた箇所も、ごっそり削除されている点である。

安部首相と夫人だけでなく、「日本会議」も守る。守る必要はなくとも、秘する、つまり表ざたしないほうが得策と判断(もしくは指示)されたのではないか。

 

まず言葉ありき

南スーダンPKO派遣で、自衛隊の日報が破棄(その後データが「発見」)された事件を思い出す。共通するのは、まず言葉ありきということだ。

PKO派遣の是非を問う国会で繰り返されたのは、南スーダンは戦闘状態にない、という稲田大臣の答弁だ。破棄されたのは、この言葉のウソがばれてしまうデータである。

稲田大臣は問われるたびにウソを吐きつづけたが、それは自らの保身というよりも、安部総理を守るためのように見えた。森友学園問題でも同じ図式に見える。

このたびの言葉は、自らや昭恵夫人が関与していたら「総理も議員も辞める」、との安部総理のタンカである。近畿財務局が決裁書類の改ざんに手を染めたのは、この発言後のことだ。安部総理を辞任に追いやってはならない。実にシンプルな話しである。

総理のタンカは、売り言葉に買い言葉で発せられたものだ。もしかしたらあの人には、自分の言葉は発せられれば真実になる、との体感があるのではないか(たとえば「アンダー・コントロール」とか)。

あながちはずれていないように思う。なぜならその言葉を真実にすべく、官邸は圧力をかけ、省庁は書類を破棄し、改ざんし、問われればウソの答弁をし、その答弁を整合性あるものにするために更に改ざんを重ねてくれるのだから。

官邸が官僚の人事権を握っているのが悪いのだ、と多くの方が指摘している。それはその通りだけれど、そういう「仕組み」だけの問題ではないだろう、とも思う。握った権力をどう生かし、どう使うのか。品も格も志も理念も矜持も、みんなひっくるめての政治家としての、もっと言えば人間としての質の問題ではないのか。

権力は腐敗し専制を目指す、ということ以上に、この政権に腐敗と専制は内在していたのではないか。麻生太郎氏が「ナチスの手口に学んだらどうか」と発言したのは2013年のことである。

半藤一利氏が気づいた麻生氏の「ナチス手口学べ」発言の真意
(NEWSポストセブン 2015.8.13)

反対世論の多い法案も(国会審議前にアメリカで成立を約束し)、短時間で目くらまし的に法整備をすすめるために複数の法案を束ね、こじつけ理由と強行採決でつぎつぎに成立させ、野党の臨時国会開催要求は無視し続け、開いたとたんに内閣解散。消費税先送りで選挙を戦い、勝てば改憲にも支持を得たと言い放つ。この政権の真の問題は、その手法であろう。民主主義の下で見事に独裁専制をやってのけたナチスの手法に、確かに学んでいる。安保法制だけでなく共謀罪やマスコミ対策でも。

 

なぜ、どこがリークしたのか

朝日に改ざんをリークしたのは大阪地検ではないか(財務省かもしれないが)、という指摘がある。東京が動かないから、と。

大阪地検特捜部は、籠池氏の詐欺行為だけでなく、財務省と国土交通省に対する背任罪および公用文書等毀棄罪についても捜査していた。二つの市民団体の告発を東京地検が受理し(受理まで4か月もかかったとか)、大阪地検に回したのは昨年の9月のことである。

【森友問題】大阪地検、財務省を背任罪等の容疑で捜査へ…安倍首相の関与解明も
Business Journal(2017.9.26)

上記記事によると、関係省庁は他にもいくつかの不正疑惑で告発されている。籠池氏は補助金詐欺で早々に逮捕拘留されているのに、国の背任罪と公用文書等毀棄罪のほうについては操作の進展がほとんどない(報道されない)、ということのおかしさ。そこにどういういきさつ、あるいは圧力があったのか。

だから地検がリークという形でしか動けなかった、というのはあり得るのかもしれない。いや、動かすためにリークしたのだ、という見方もあろう。いずれにしろ、企業が内部告発・リークでしか不正を暴けないということとはレベルが違う話ではある。

 

失われたもの

安部総理が(直接間接を問わず)図った友人や支援者に対する利便供与は、それ自体もちろん問題ではある。けれどももっと大きな問題は、自らの保身や政権維持のために取られたこれらの手法が、この国の大事な部分、行政や政治に対する信頼やシステムそのものを棄損し、死者をだし、多くの貴重な時間を国会審議=国民から奪ったということだろう。

寺脇研氏が、文科省が加計学園認可に関して「官邸の圧力」をリークした時点で、財務省も書類改ざんをリークできなかったものだろうか、というような趣旨のツィートをしていた。確かに、それが出来ていれば、担当したお役人も自殺せずに済んだし、私たちが失うものも少なくて済んだのだろう。

ここにきて、「会計検査院も2種類の文書に気付いていた」との47ニュース(12日夕方) 。問題が発覚するまでの長い、暗い道のりが、そのままこの国の大事なものの毀損の深さを語っている。

古賀茂明「森友文書“改ざん”で白旗 霞が関崩壊を止めるには安倍総理退陣しかない」
(AERA.dot 2018.3.12)

・・・官僚は、自分たちの立場が危なくなると、意外と愚かな行動をとってしまうということだ。これは当たり前のことかもしれないが、官僚というのは、「聖人君子」でも「悪人」でもない。「普通の人」である。そして、「普通の人」について当てはまるのは、「性善説」でも「性悪説」でもなく、「性弱説」だと私は考えている。

 つまり、官僚も弱い人間だ。自分の地位や所属する組織の存立を脅かすような事件を前にすると、普段はまともな思考をする人でも、尋常ではない不正をする誘惑に勝てなくなる。その時は、良心も、賢明な判断力も、正義を貫く勇気も全て消え失せてしまうのだ。

 したがって、官僚の「弱さ」を利用すれば、権力者が、霞が関全体を「不正遂行マシン」として使うことも可能になる。逆に言えば、最高権力者は、そうしたことを生じさせないように自らを律し、逆に官僚の良いところを際立たせるような指揮をとらなければならない。

 そうしたことを念頭に置いたうえで、仮に、今回の事件がこのままうやむやにされて、安倍政権が続くとどうなるか考えていただきたい。

 官僚たちは、安倍政権の強大さをあらためて思い知るだろう。その結果、安倍総理の歓心を買うためにその意向を忖度して不正まで行う。さらに不正を正そうとすることは身を滅ぼすことになると考えて、見て見ぬふりをする。そして、総理が関心をもたない大部分の行政分野で、せっせと自分たちの利権拡大に励む。

 この国の行政は停滞ではなく後退し、腐敗はその極に達するであろう。

 それを避けるためにはどうすればよいのか。もはや、微修正で済む段階ではない。

 安倍総理が退陣して、正義と公正を実現する気概を持った新たなリーダーを選び直すこと。日本の行政機構を救うには、それしか選択肢がないのではないだろうか。

 

佐川氏証人喚問 2018.3.14

佐川氏の国会証人喚問に、「野党の審議復帰を条件に交渉に応じる意向」との報。ただし、昭恵夫人に関しては否定的と。そうだろうなあ。とても危なくて出せないんだろうなあ。とはいえ世論も夫人喚問で高まるかもしれない。それでもあくまで拒否を貫いた場合、どうなるか。首相、そしてチーム安部は、国民の批判と不信と怒りの声に持ちこたえられるだろうか。

昭恵夫人の他に話を聞きたい証人がもう一人いる。夫人秘書であった谷査恵子氏である。谷氏の海外駐在も、佐川氏の国税庁長官就任も、考えてみれば実にあからさまな人事だ。疑惑解明のカギを握る官僚が、こんなに見え見えの人事で動かされている異例さ。けれどもこの異例さも、安部政権のいくつかの掟破りと同様、メディアも国民もマヒしたように見過ごしてきた。

佐川氏は、この時のためにこそ、つまり、辞任でも片が付かない場合、昭恵夫人の前に防潮堤として立つために、最後の捨て札として政権に囲い込まれたとも言える。なんという貧乏くじ!  今日の朝日は、決裁書改ざんは財務省からの指示だった、と報じている。ウソをつかせたにもかかわらず、自らの責はないと頭一つ下げず、平気な顔で罪を全部一個人に押し付けてくる政治家や組織。もう守るのは、自分の心と体と良心だけにしてください、佐川さん。

もうひとつ。今日の朝日新聞で目に留まったのは、実は海外で(英米仏露中韓の新聞やローターやAFP通信など)この事件がどう報じられているか、という記事である。特にイギリス二紙の以下の部分。

英紙タイムズは13日、「偽造された文書、ゆがんだ不動産取引、自殺、そして子どもたちが戦前の軍国主義を習う国家主義的な幼稚園――。1年間のスキャンダルの後、こうした疑わしい要素が一つになって、右派の安倍首相を脅かす政治危機となっている」とこれまでの経緯を伝えた。森友学園については「戦前の日本で主流だった愛国主義と自己犠牲を教える幼稚園」と描写した。

英紙ガーディアン(電子版)も12日、
「・・・森友学園の籠池泰典理事長について「大阪の右翼の学校運営者」と表現。「官僚は、保守ロビー団体、日本会議への安倍氏の支援に言及した部分も削除していた」と報じた。また昭恵夫人が森友学園の教育方針に感涙したと伝える記事の引用部分などが、財務省の文書から削除されていた(略)」

問題視すべきは、「著しいひいきと隠蔽のスキャンダル」(AFP通信)だけではない。と朝日は(まだ)書けないのね。

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