日本政府はまた邦人を一人見殺しにするのか

日本政府はまた邦人を一人見殺しにするのか

フリージャーナリストの安田純平がシリアで反政府勢力に拘束されたというニュースは、
かなり前からTwitterで目にしていた。
一部のメディアでも報じられた。
微妙な解放交渉の妨げになるのを危惧してか、
いずれも抑制的な触れ方であった。
が、「であった」状況が変わった。
安田氏のメッセージビデオが公開され、
主要メディアも一気に大きく報じ始めた。

デジャブのように一年二か月前のことが浮かんでくる。
内藤さんや中田先生にも、おそらく同じデジャブ感があるのだろう。

 

きっと安田氏本人にも、同じデジャブ感がある。
「私はジュンペイ・ヤスダ」 1分12秒の発言の全文

私は妻、父、母、きょうだいを愛しています。いつもあなたたちのことを考えています。あなたを抱きしめたい、あなたと話がしたい。しかしもうできない。

「彼らに自由に話しても良いと言われ…」とコメント冒頭にあるが、たとえ自由に話したとしても、それを編集無しに公開することなどあり得ない。このビデオを、安田氏は反政府勢力にシンパシーをもっていたはずだからプロパガンダに協力しているのかもしれないと、中東地域研究者である池内恵氏は分析している。だとしたら「報道官」として生き延びる可能性があるし、安田氏が生き延びるためにそうであることを願っている、という文脈である。
安田純平さんのビデオ声明について

そうである可能性が無いわけではない。和平会議が進み、ロシアがシリアからの撤退を表明したこのタイミングは確かに考慮すべきかもしれない。拘束した側が、一番効果があるだろうタイミングでカードを切ってきたのだと。

だが、そうでない可能性もある。日本政府との交渉が行き詰まってしまったため、あるいは政府が(例によって)「テロリストとは交渉しない」とまったく交渉に応じないため、最後の揺さぶりをかけている、とか。池内氏がプロパガンダへの協力と読み解いた部分は、邦人救出に動こうとしない日本政府に対する(拘束した側と本人の両方からの)批判と読むほうが自然ではないか。

「自己責任論」がまた出てくるだろう。記憶によると安田氏は、危険地帯での取材で危険な目に合うのは自己責任である、と語っていた。「自己責任」という言葉は本人だけが言える言葉だと、私は思っている。本人の覚悟の言葉を第三者がなぞる時、それを「見殺し」という。氷の刃のようなその言葉はいつか自分に返ってくるのだと、それを言う彼らは知っているだろうか。

拘束の安田さん救出の道筋は 政府、身代金に応じぬ考え 朝日新聞3/18

追記 3/25

安田純平さんを救出するために(上)動画の背景 2016.3/23
安田純平さんを救出するために(中)米国の転換 2016.3/24
安田純平さんを救出するために(下)政府の対応 2016.3/25

追記 4/02

安田純平さん拘束事件でヌスラ戦線の誤算。身代金目当ての甘い思惑も… 2016.4/02

追記 4/11

伊外相、安田純平さん事件で「日本政府に情報協力の用意」

追記 5/09

朝日朝刊にも記事が出たが、こちらで川上さんが詳しく報じている。

ヌスラ戦線がスペイン人ジャーナリスト3人解放、カタールが仲介、安田さんでもかぎを握る?

(2014年の米国人フリージャナリストの解放に関して)ケリー国務長官は声明を出し、「2年間、米国政府は彼の解放を実現し、さらにシリアで人質になっているすべての米国人の解放を支援してくれる力になってく れる者、影響力を持っている者、手段を有するかもしれない者たちに緊急の助力を求めて20カ国以上の国々と連絡をとった」と明らかにした。

日本は安田さん解放に向けて何をして、何をしていないのか?

追記5/13

「ISに売られるかと」 シリアで長期拘束のスペイン記者、恐怖語る 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

追記5/30

 

  • トップへ戻る
  • カテゴリアーカイブ
  • HOME

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。* は必須項目です。


*