音楽と映像の力 — 『自由と壁とヒップホップ』、第9回UNHCR難民映画祭

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昨夜、『自由と壁とヒップホップ』を視聴した。
優れた音楽ドキュメンタリーであった。
映画の主人公、ラップグループDAMが10月にジャパンツアーを行うという。
その応援クラウドファンドに参加したので、特典視聴が出来たのだ。
観たかった映画で、かつ地元では上映されなかったので(たぶん)、
それだけでも参加できてよかった。

『自由と壁とヒップホップ』

ヒップホップミュージック(ラップ)はあまり聴いてこなかった。たぶんこれまでピンとくるものがなかったせいだろう。でも、この映画のラップはとてもしっくりと体に届いた。ラップという音楽は、歌詞とラッパーの思いとその背景が一体になったもので、それを丸ごと受け取るべき音楽だということが、やっとわかった。

さらに言うと、ラップが生まれる土壌としてのパレスチナの大きさ、重さ。ラップという技法になじめないで来たけれど、ドキュメントを通してパレスチナがラップを生む必然性が痛いほど伝わってきて、その必然性に技法ががっしりとはまるのが納得できた。DAMのターメルが、俺たちDAMの構成要素は30%がヒップホップ、30%が文学(サーダウィー — 敬愛するエジプトの女性作家 — の名前があがって嬉しかった)、残りの40%がこれ、と鉄格子のはまった窓の外を指す。そういうことだ。

ガザが屋根のない牢獄だということのリアル。ヨルダン川西岸とガザで、いかに彼らが分断支配されているか。イスラエルでのユダヤ人とパレスチナ人が共存する緊張感。どれも強烈なドキュメントだった。

いくつも印象的なシーンがある。
集まった子供たちに向かって語り掛けるターメルの言葉が、そのままラップだった。
こころをひらけ、恥じるな。
倒れても堂々としてろ、泣いたら涙をぬぐえ、頭を高く上げて、
前に進むためには、どこから来たか知らなきゃ、
俺たちはパレスチナ人だ。
ここで一人の子供が、僕も? と尋ねる。
みんなそうだよ、何だと思った ? とターメルが訊き返す。
アラブ人、と子供。生粋のパレスチナ人だよ、とターメルが子供の肩を叩く。

イスラエルの攻撃の直前と直後に撮られたアパートが映し出される。破壊された建物の前で、住人の一人でもあったラッパーの言葉は、暴力が壊すものが肉体や建物だけではないことを語る。その壊れたものを明らかにするのも、壊したものに対する抗議も、壊れたものを少しづつ修復するのも、全てラップである。

ガザにも、DAMに触発されるように新しいラップグループ、PRが生まれる。後半から最後にかけて、彼らとの交流、同じステージに立つという夢の困難さ、そして小さな希望の光へとつながるストーリーも目を離せなかった。

もうひとつ惹きつけられたのは、女性ラッパーの姿だった。女性監督ゆえということもあるだろうけれど(ジャッキー・リーム・サッローム、パレスチナ人とシリア人の両親を持つ。ニューヨーク在住)、これはDAMの姿勢であり、ラップそのものの姿勢でもある。ラップとは、押しやられた者、押さえつけられた者、後に続くもの、そういった者たちへの呼びかけでもあるからだ。DAMは子供たちに語り掛け、PRへの支援を惜しまず、女性ラッパーを探す。女性ラッパーは、まず最初に、女が人前で歌うことに反対する親族や周囲の人々と戦わなければいけない。けれどもひとたび彼女たちが歌い始めるや、いかに彼らのラップが豊かになることか。そこに、アラブ音楽の豊かさも流れ込んでいく。

 icon-chain 占領×アラビア語×音楽=<リアル>HIP HOP
パレスチナ史上初の HIP HOPグループ「DAM」Japan Tour開催決定!!

追記 9/3

 icon-chain イスラエル、憎悪犯罪急増 アラブ系住民に「死ね」・暴行・投石

今回のガザ攻撃で、破壊は一段と酷かった。やっと停戦にこぎつけたものの、真の停戦合意に至るかはまだ不明である。シオニズム侵略支配イデオロギーを支えるイスラエルユダヤのパレスチナヘイトも、上記記事に見るように一層酷くなっているようだ。映画撮影時よりも彼らの困難は増している。
(➾ 8/26日の長期停戦合意から一ヶ月、イスラエルが資材搬入を認めず、破壊された市街地の再建は全く進んでいないという。が、西岸のファタハとガザのハマスが統一政府による統治を行うことで合意。これにより少しでも事態が動くことを願う。10/2記)

第9回UNHCR難民映画祭

こちらは、世界の難民たちを描く13本の映画フェスティバル。
去年観たイタリア映画は二本が移民と難民をテーマにしたものだった。いずれもイタリアが舞台だったが、イタリア人監督でシリア難民の映画が撮られている。他にも観たい作品が何本もあるけれど、行けるかどうか。

  icon-chain 第9回UNHCR難民映画祭公式HP

付記 9/9

必見!ガザの破壊のすさまじさを視覚的に表現した作品 (岡真理さんから)

 

付記 10/6

スウェーデンが欧米で初めてパレスチナを国家として承認するというニュースが入ってきた。
スウェーデンのパレスチナ国家承認問題(中東の窓 10/6)

イギリスでも来週下院議会で「パレスチナ国家承認」を裁決するとのこと。
英国下院議会で「パレスチナ国家承認」案の票決(al-Hayat紙 10/6)

 

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