言葉に意味を失っている安倍政治に立ち向かう若者たちの言葉

いつからか、SEALDs という若者たちの名前をTwitterで目にするようになった。
6月末にはこのブログでも、国会前の安保法制抗議行動の動画を紹介した。
参集人数は14日には15,000人、
15日には主催者発表で述べ10万人という。
新たな動きが、新たに核となる動きが出てきているのだ。
安倍首相や閣僚が発する言葉からことごとく意味が失われ、
空疎で嘘っぱちでいいのがれで無責任で、
だから何を言っているのかがさっぱりわからなくて、
いくらなんでもこれは真っ当な政治家の言葉ではない、
いや真っ当な人間の言葉ではないと呆然としている時、
若者たちの発する言葉が目に飛び込んできたのは明るい一条の光だ。

SEALDsの言葉は、国会前に行けない私にも聞き取ることができる。
彼らの言葉は、その場にいた人が撮った一枚の写真からも聞き取ることができる。
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デモの紹介で貼ったアイキャッチ画像は、動画から私がキャプチャしたものだけれど、強い言葉を発している。雨の中(昨日も雨、今日は台風という悪天候だ)、傘をさしてPEACE NOT WAR とプラカードを掲げている。その言葉とは、PEACE NOT WAR という紙に書かれた言葉のことではない。彼女たちがそうやって立ち尽くしているそのことが、ひとつの大きな意味を持った、獲得された言葉なのだ。

ジャーナリスト志葉玲が、そんな彼らを追っている。

国会前に約10万人!安保法制の強行採決狙う与党に怒れる人々が抗議-写真&ルポ(Yahoo! News 7.16)
安倍政権を揺るがす!?学生団体SEALDsが今週3日間連続で安保法制強行採決反対の国会前抗議(Yahoo! News 7.14)

志葉さんの写真から一枚。

女の子たちがどんどん前に出ていく、と誰かがツィートしていたが(志葉さんでしたっけ?)、写真でもそれがよくわかる。彼女たちの姿に、70年代に学生であった私は、個人的にとても深いものを感じている。当時の学生運動に、彼女たちのような女の子はいなかった。それが多分、あの学生運動言葉が急速に力を失い、空中分解していったことの理由の一つなのではかったかと、今は思える。

とすれば、彼らの言葉は、アメリカによって与えられた自由と民主主義と主権在民を今度こそ本当に自分たちのものにしていける力を、持つものになるだろう。彼らのサイトのセンスの良さと打ち出されているシンプルで現実的な志向性も、それを語っている。こういった政治的な戦略もまた、70年代にはなかったものだ。是非彼らのサイトを覗いて欲しい。

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話は戻るけれど、安保法制について少し検索をしていて目に留まった記事があった。
冷泉彰彦氏のこの記事を読んで、前回の記事に補足事項が一つあることに気付いた。
「新安保法制」の問題点とは何か(NewsWeek 2015.3.26)

 (自民公明の安保法制合意について)要約すれば以下の通りとなります。

(1)日本の周辺で危機が起きた際の集団的自衛権による米軍、他国軍との連携。
(2)世界中を対象とした、有志連合やPKOへの自衛隊参加。
(3)自衛隊の武器使用条件の緩和、「駆けつけ警護」など相互殺傷の可能性のある作戦への参加拡大。

・・・前述の3つの問題は、アメリカ並びにNATO諸国あるいは、豪州やインドなど日本の軍事外交上の同盟国には歓迎されると思います。・・・

理由は簡単です。アメリカにとっては、東アジアの戦力バランスあるいは世界における反テロ戦争に関して、日本がより「負担」をしてくれる分だけ、アメリカとしては負担が軽減されるからです。

負担が軽減されて助かるとか、カネが浮くと言うよりも、政治情勢や経済情勢の変化の中で「日本は負担が少な過ぎるからタダ乗りだ」とか「日本はカ ネだけ出して、血を流すのは我々なのか」といった「日本切り捨て論」を防止する効果があるのと、何よりも「日本に要求を受け入れさせることができた」とい う「成果」をオバマ政権が議会や世論にアピールすることができる、そうしたアメリカの内政上の問題が背景にあると思います。

問題は「リアリズム」の観点から直視すべき点が、もう1つあるということです。

それは、この「新安保法制」を推進して日本が「負担」をするとしても「日本国内の歴史修正主義にアメリカが理解を示す」ことはないという点です。 いわゆる「負担」の問題には政治的な足し算や引き算が成立する一方で、歴史認識の問題については、そうした「差し引きの計算」は成立しません。

この点に関して安倍政権の姿勢は、やはり脇が甘いと思います。自衛隊を「軍」と呼ぶとか、戦後70年にあたっていまだに厳粛な追悼の姿勢をどう示 すか決めかねているというのは、この点、つまり「歴史認識の問題は差し引きの計算にならない」という「リアリズム」を認識していないのではないかという懸 念が消えない、そこが大変に気掛かりです。

どうして「差し引きの計算」にならないのでしょう? それは価値観の共有という大切な問題だからです。戦後世界というのは、二度と世界大戦を起こ してはならないという「国連憲章」を最高の規範として成立しています。その世界において、旧枢軸国の名誉回復を企図するとか、戦前と戦後の「国のかたち」 の区別を曖昧にしたままで自衛隊を「我が軍」などというのは、そうした価値観を共有「したい」というメッセージ性に欠けるのです。

さらに言えば、「旧枢軸国の名誉回復を企図している」というイメージの拡散を安倍政権が今後も放置すれば、それは東シナ海から西太平洋にかけて活 動を活発化している中国軍について、「行動には大義がある」という誤った理解を拡大させることにもなります。そうなれば、結果的に軍事バランスも、外交の バランスも崩れてしまうのです。アメリカはそのことを大変恐れています。

こうした無自覚な言動がいつまでも止まらないようでは、「新安保法制」を成立させて自衛隊に大きな「負担」を背負わせても、結果的に日米関係は改 善しないし、日本の周辺における軍事バランス・外交バランスも好転しない、その結果として日本の安全は「より保障されない」ことになってしまいます。

昨日、安倍政権の「戦後レジュームからの脱却」は、対米追従という戦後レジュームから一歩も外に出ないものであり、その枠組みの中だけで戦前レジュームを目指すものだ、と書いた。だがアメリカは、戦後レジュームからの脱却を許さないだけではなく、戦前レジュームへの回帰も許さない、ということ。安倍政権は、日本の安全と平和をアメリカに売り渡すことによって国益を損なうだけではなく、自らの悲願の達成も全く得ることなく終わる、ということだ。あまりにも愚かである。

もう一つは、日本の政治の言葉のウソを鋭く指摘し続けているアメリカ出身の詩人の言葉。
・安保法制・私はこう考える:世論が動けば変わる 詩人、アーサー・ビナードさん(47)(毎日新聞 2015.6.22)

 安全保障関連法案が必要だとして安倍晋三首相が説明する「切れ目のない対応」とは、米国の決定が何一つ歯止めがかからないまま自衛隊の現場まで届く、ということだ。米軍と自衛隊の区別がなくなる。自衛隊の活動について日本国民の意思は反映されなくなり、日本は独立国家の体をなさなくなる。

そもそも、日米同盟は真の同盟ではない。国会の党首討論での首相の言い回しが、日本の米国への従属を雄弁に物語っている。首相は、日本が無条件降伏を受け入れた1945年のポツダム宣言の内容を問われて「承知していない」と答え、自らの政治思想や歴史認識を述べなかった。仮に一国の首相としてポツ ダム宣言を否定すれば、米国世論の反発を招き、安倍政権はもたないだろう。

法案を巡り、参考人として国会に呼ばれた憲法学者が「法案は違憲だ」とはっきり言った。この事態に国民は無関心であってはならない。安倍政権は「国民は株価や景気に目を奪われ、安保問題では立ち上がらない」と計算しているのだろう。

国民はこの問題にどう向き合い、何ができるのか。沖縄県が手本になる。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題を巡り、県民は自分たちが目指す沖縄を作ろうと、移設に反対する翁長雄志知事を誕生させた。

法案についても、表現の自由を保障する憲法21条を生かして反対の声を上げれば、憲法9条とかみ合わない違憲の法案は通らない。世論が動けば国は変わる。

重要な指摘だと思う。特に太字にしたところ。

最後に、今年のモロッコ砂漠の音楽フェスティバルでの収穫、
BenZabo(マリ共和国) の音楽をSEALDsへの応援歌として貼っておく。
ここ数日頭の中でなり続けている、Democratie。

追記

7/18 朝日新聞:安保法案 大学から「NO」京大初の声明「いいね!」1.7万件

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安保法制に反対する声明は多く出ているけれど、
朝日でこれほど大きく取り上げられたのは初めてだと思う。
FBのいいね!の数も、新しいオリジナルな言葉があってのこと。

★安全保障関連法案に反対する学者の会 の呼びかけ人の一人内田樹も、
皆自分の言葉でつぶやこう!と強硬採決直前にツイートしていた。
どこでもいい、何でもいい、小さな自分の「おかしいじゃんこれ」をあらわすこと。
共感したものをリツイートで拡散していくだけでも意味はある。

ちなみに上記「学者の会」が集めている署名は学者1万人、一般人2万人を超えた。
私も学者じゃないけど署名してる。
20日には100-200人という数の賛同人の学者が集まって記者会見を行う。
200人が壇上に集まるというのも前代未聞。
どう報道されるのか!?

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