案じていたように犠牲者の数が増え続けている。
同胞団側は「殉教」に報復の正当性を訴え、
暫定政権側は、武力制圧を「テロ対策」だと主張する。
事態の展開の前にすでに双方の言い分があり、
その主張をあとから現実が証明していくような、奇妙な倒錯感がある。
政権側の同胞団への非難は、「テロ組織」というものであった。
強制排除・衝突で、政権は、彼らを真の「テロ組織」にした(しつつある)、
ようにも見える。
今さらではあるけれど、武力介入の直前、同胞団軟化の報があった。
ムスリム同胞団のハッダード報道官は13日、「憲法に基づく正統性」が保証されることを条件に、危機回避に向けた調停のテーブルに着く用意があると述べ た。ロイター通信が伝えた。治安当局による同胞団の座り込み排除が近いとの観測が強まる中、一応の柔軟姿勢をみせることで暫定政権側の出方をうかがう狙いがあるとみられる。
(エジプト 同胞団、調停に軟化 条件付き「テーブル着く用意」
産経新聞 8/14)
この声明は間に合わなかったのだろうか。
それとも、無視されたのだろうか。
エルバラダイ氏は辞任を求め、受理された。
そのことを「中東TODAY」の佐々木さんは「敵前逃亡」と強く批判している。
エルバラダイ氏の辞任は、もとより武力排除には反対していたし、
にもかかわらずの強制介入と非常事態宣言に抗議して、ということだろう。
だが佐々木さんは、氏が軍と同胞団の調停役を果たせなかったこと、
その責を自らに問うことなく、今後の事態収拾の役を果たすつもりもなく、
これだけの死者の数の責も自分にはないとばかりの辞任が、許し難く映るのだろう。
(エルバラダイ氏は敵前逃亡の卑怯者 中東TODAY 8/15)
しかし、それにしても、これしか道はなかったのか。
問うても仕方がない問いだけれど、問わずにはいられない。
そして、犠牲者の多さ。
銃弾を受けた遺体だけでなく、焼け焦げた遺体があると、
モスクの葬儀を伝えるニュースにあった。
犠牲者の数を最小限にする努力は、なされたのだろうか。
もちろんその努力は、双方に求められるものである。
暫定政権に、エルバラダイ氏であろうと責があるように、
同胞団指導者の責もまた、同じだけある。
現状は、武力衝突の連鎖に突き進んでいるように見える。
警察署やコプト教教会が襲撃を受けているが、同胞団報道官は、
「同胞団員の怒りは今や統制を越えつつある」と、言っているらしい。
(エジプト情勢(同胞団報道官の談話) 中東の窓 8/16)
聞きたいのは、こんな他人事のような言葉ではなく、
統制の意志と責任の自覚の言葉だ。
◆その他 8/16のメモ
・エジプト暫定政府が米に反論 (エジプト世界駅 8/16)
・流血と専制政治の未来に向かうエジプト
(JBPress ファイナンシャル・タイムズ 8/15)
・エジプト モルシー派排除に強権発動 リベラル派反発、火種も
(MSN産経ニュース 8/16)
・エジプト衝突、死者600人超える―同胞団、新たな抗議行動入り
(The Wall Street Journal 8/16)
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