今日読んだ中で、一番考えさせられた記事。
欧米の論調が、暫定政権に民主化ロードマップの早期実現、
つまり早期の民主的な選挙を提言する中、なんという現実直視だろう。
・今のエジプトに必要なのは選挙ではなく安定だ
(JBPress 英フィナンシャル・タイムズ紙 8/20付け)
だが困ったことに、今日のエジプトで民主主義の回復を求めることは非現実的であり、短期的に言えば危険でもある。非現実的であるのは、エジプト軍は明らかにムスリム同胞団と決着をつけようとしているからだ。
軍には、ムスリム同胞団が意味のある形で政治体制に復帰することを容認するつもりなどない。米国が軍への援助を停止しても、この決意を変えさせることはできないだろう。サウジアラビアが米国に代わってエジプト軍を援助することに非常に乗り気だからだ。
さらに言えば、エジプトのリベラル派の多くが結論づけているように、改革がなされていないムスリム同胞団に再度政権を委ねれば、別種の脅威が民主主義にもたらされることになるだろう。
また現段階では、すぐに選挙を行うよう迫ることも危険だろう。そうした選挙が平和的な雰囲気で実施され、その敗者が冷静に選挙結果を尊重する場面など、とても想像できないからだ。
当面は、投票箱に再度足を運ぶことよりも、世の中を再度安定させることの方を優先しなければならない。確かに、政治的抑圧や、自由の否定を見たいとは思わない。しかし、内戦に比べればマシだ。
米国とEUは今、エジプト軍に民主主義への速やかな回帰を迫るよりは、むしろ人権の保護とクリーンな政府の復興に重点を置く次善策を採用すべきだ。こうした目標でさえ、達成するのは極めて難しい。
記者は、なんとしてもエジプトを、
アルジェリアのような内戦(の長期化)に追い込んではいけない、と説く。
それだけ状況は楽観論を許さない、ということだろう。
暫定政権への日本も含む欧米からの全否定的な非難に対しては、
すでに政権側から反発のアピールが出ている。
政権が同胞団を「テロ組織」と一面的に決めつけ、
対話の道を閉ざすのと同じ愚を、国際社会は犯してはいけないと、私も思う。
だが、軍がどれほどこの機会に徹底的に同胞団をたたこうとしても、
それがよい結果になるとは思えない。
過去の同胞団と軍の、対立と融和の歴史を見ても、それは明らかではないか。
Newsweek は、武力弾圧の結果について、次のような懸念を述べる。
これもまた平穏ではなく暴力の蔓延する社会を招く道だ。
・焦点:エジプト騒乱にアルカイダの影、勢力拡大へ「絶好の機会」か (8/21)
JBPressには、エジプト軍についてのこんな記事もあった。
エジプト軍の力の大きさは、良し悪しを言う以前の現実である。
・元防衛駐在官が分析するエジプト情勢–エジプト国防軍とその国民 (8/21)
欧米に手詰まり感、との報もあったけれど、新たな動きもある。
・エジプト:デモ犠牲増加 仏がサウジに働きかけ EU動く (毎日jp 8/21)
そして、私が一番気にかかっていたこと。
・エジプト強制排除 1週間 「民衆革命」の主役 分裂 (東京新聞 8/21)
反モルシ政権の「路上民主主義」を担っていた人たちは、
どこに行ってしまったのだろう、と思っていた。
彼らの声は、(メディアを通して)なかなか伝わってこなかったからだ。
欧米やアラブ諸国の仲介よりなにより、軍・暫定政権を動かすのは、
「主役」たる彼らではないのか。
2200万の署名が求めたのは、このような事態だったわけでも、
まして内戦状態でなどあるわけがないだろう。
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