『橋下氏の声は世界に響いたのか 橋下大阪市長の特派員協会会見を読み解く』で、
神保さんが言うように、橋下失言をきっかけに、はからずも?
この問題がお茶の間ネタになったのは良いこと、なんだろうとは思う。
でも、ここに至る伏流のようなものが確かにあって、
それに情けなさと憤りの両方を感じていた。
でも今日は、そういう伏流に正面から反論しているブログを見つけたので、
少し気持ちが明るい。
しかもこの方(30代男性)、2011年から、
相当数の慰安婦に関する記事を書いていた。
最初の記事がこちら。
・[慰安婦][戦後]慰安婦の碑に込められた意味と、20年まったく進歩のない否定論。
この記事の以下の部分が、既に、ほとんどの点を言い尽くしている。
んで、ここで1つはっきりと分かることがあります。
それは、この20年間、慰安婦問題の否定論を振りまいてきた人々というのは、実は慰安婦問題についてまともに考えたことが一度もないということです。
ですから、これから先も延々と虚構の問題設定を繰り返すでしょう。
慰安婦問題についても、“慰安”という言葉の欺瞞性、男性の女性に対する、占領者の被占領に対する、武装者として非武装者に対する、日本人として朝鮮人、中国人などに対する、買い主としてのなどなど、これらは差別や優越意識や植民地主義などが絡み合い重なり合っている問題でもあります(*2:参考:鹿野政直『兵士であること』2005年)。
これまでも「慰安婦」問題は、「強制性」の有無に矮小化され、
論点をすり替えられてきた。
これが疑義の指し挟まる余地のない人権問題であり、
差別問題であるという世界の常識を、
私たちは国内で共通認識として持てないで来た。
そのことをまず確認する必要がある。
そもそも橋下失言は、嫌韓流や新大久ヘイトスピーチデモ、
それから、友人が中学の授業で、
アベノミクス批判(実は批判ですらない)+民族差別授業で2ch
(&直接学校への電話・ファックス・メールも)で攻撃されたような、
ネオナショナリスティックな差別感情を下敷きにしている。
さらに彼が読み込んでいたのは、日本の性差別に対する甘さ緩さだろう。
もし市長が、国内向けだけに発言していたとしたら、
これほどの問題にならなかったと思うし、
それがどういうことかということを、考えなければいけない。
少し前(去年の9月頃)になるけれど、
NHKで櫻井よしこ氏と田中均氏、
中韓の学者の対談番組あった(書いた記憶あり)。
テーマは尖閣諸島と竹島問題、そして慰安婦問題。
あのときは櫻井氏のアピールの仕方、
口当たりの良い言葉と涼しい表情で問題を糊塗する犯罪性に唖然とした
(つまるところ、「強制性はない」との主張に過ぎないんだけれど)。
でも、神保さんとのトークで萱野さんが指摘しているように、
「何故日本だけがこれほど悪者にされなければいけないのか、
というくすぶる思いが日本にあること」については、
もう一度よく考える必要があると思う。
日本が人権問題・差別問題を、教育の場でしっかり教えてきていない、
というのがまずひとつ。
いや、教育で抜けているのは、日本の現代史もだ。
もうひとつは、彼ら彼女たちの差別・被差別の構図について。
たぶん、彼ら彼女たちは、このような差別によってしか、
自己肯定できないのだろう(戦略的に語っている政治家やジャーナリストは除く)。
これは日本が今内部に抱えている根深い問題だと思う。
おそらく、いじめも同根なのではないか。
上野さんの問題に橋下失言についての記事を週刊誌で読みそこね、
今日検索していたら、集会でのスピーチ動画をみつけた。
胸すく思い。
男こそ怒れ、に同感。
あと、北原さんのこの著作が気になっている。
まだ読んでいないけれど。
『さよなら、韓流』
さて、世界の常識が橋下失言の弁明をどう見るかを整理すると、
・軍の関与があった=国家の意思=強制性を認めたことになる(市長の弁明の意図に反して)
・「自分だけがやっているわけじゃない」という、
あまりに子供じみた(共感を期待しての)見苦しい言い逃れ、
=日本の人権・差別認識の未熟さの露呈
・実際の被害者がいる以上、被害者への謝罪と保障から逃げる行為は許されない
市長が、「自分たちだけじゃない」
「誰であっても女性の性的な搾取は許されない」、
さらには記者会見後も、「国家の関与の事実を明らかにするべきだ」などと、
個人的な失言を国家責任と問題の普遍性にすり替え、
結果的にハードルをあげてしまったこの問題、いったいどこへ行くんだろう。
萱野さんが言うように、これ以上は後戻りできないという共通認識を、
日本の国民が作り上げるところまで行って欲しいと切に願う。
そうそう、冒頭で紹介したサイト、
慰安婦問題の目次ページはこちら。
引用している資料もしっかりしていて豊富です。
http://d.hatena.ne.jp/dj19/archive?word=%2A%5B%B0%D6%B0%C2%C9%D8%5D
あと、6/7日の朝日から。
URL⇒ 従軍慰安婦 強制連行はなかったのか
【追記 6/8】
今日も朝日で目に留まった記事あり。
・植民地下で拷問、30億円補償表明 英、ケニアの被害者に
ヘイグ氏(英外相)は議会で、「ケニア人が植民地の行政当局から拷問や虐待を受けたことを認める」「虐待が起きたことを心から遺憾に思う」と表明。今の英政府に法的 責任はないと強調した上で、補償を決めた理由について「現在と将来のケニアとの関係を過去によって曇らせたくない」と述べた。
お見事。
「慰安婦」問題はこういう人権問題と並べて見られている。
その意味でも、日本だけのことではない、確かに。
ゆえに、その対応もまた、並べて見られているということ。
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