エジプト 続く武力衝突とデモ、アメリカが援助を一時停止

4日、10月最初の金曜日のデモで、
ムスリム同胞団と治安部隊(+反同胞団派)が衝突したとの報。
エジプト各地で軍政廃止求め行進、衝突でムスリム同胞団支持者1人死亡
(ロイター 10/5)
(国営中東通信によると4人が死亡、45人が負傷)

デモは6日にも行われ、さらに大きな武力衝突となった。

この日は戦勝記念日だった。
シリアと共闘し、イスラエルに奇襲をかけたあの戦争だ。
同胞団のデモは、記念日の祝賀集会が開かれているタハリール広場を目指した。
エジプト、デモ弾圧強化 治安部隊と衝突、54人死亡

6日にあったムルシ派の抗議デモは、40周年を迎える1973年10月の第4次中東戦争の開戦時の「勝利」の祝日を狙って動員された。治安部隊側は軍に対する挑戦ととらえ、厳しい対応をとったと見られる。
(朝日新聞 10/8)

戦勝記念日は、エジプトの人にとってどのような意味を持っているのだろう。
エジプトで軍に対する支持が厚いのは、
この戦争の勝利によると、どこかで読んだ記憶がある。
とすれば、厳しい弾圧もこの日なら許容されるという軍の読みも、
あったかもしれない。

さらに昨日今日と、いくつか重要なニュースがあった。
まず、暫定政権が同胞団のNGO認可を取り消すと発表したこと
(9月には裁判所が同胞団の活動禁止の判決を下している)。
エジプト:ムスリム同胞団のNGO登録取り消し

ムスリム同胞団は、かつてのムバラク政権下で非合法な組織とされて活動を抑えられましたが、モルシ政権下のことし3月、NGOとして認可され、活動の法的な裏付けを得ていました。
このため、今回の認可取り消しという決定は、暫定政府がムスリム同胞団を再び非合法化するために布石を打ったものとみられます。
(NHKニュース 10/9)

あらためて、数々の慈善活動は非合法組織で行われていたのか、と驚く。
合法であったのは、なんとこの半年間だけなのだ。
『イスラムを生きる人びと』に紹介されていた、
様々な慈善団体を思い出す。
団体の関係者は皆、同胞団との関係を聞かれると否定する、
と記されていた。

もう一つは、モルシ大統領の初公判が11月4日に開かれる、というもの。
同胞団の反発は高まり、軍・暫定政権に対する対立姿勢も激化するだろう。
気になるのは、過激派のテロである。
イスラム過激派の戦略転換(南シナイでのテロ)

これまでイスラム過激派は北シナイで活発に活動していたが、北では軍の厳重な反撃もあり、相当多くのテロリストが制圧されたりしたこともあり、今後のテロ活動の焦点を観光産業に当て、特に南シナイ半島を主たる目標としたとのことです。
テロリストの目標は、勿論紅海のアフリカ側、ルクソウル等内陸の史跡観光地も含まれるが、シャルムッシェイフを中心とした南シナイは、内外の観光の中心地で、主だったホテル等の観光施設、重要な空港等が集まっていることもあり、そろそろ観光客がエジプトに戻ってきたこともあり、政権に対する打撃を与えるた めに、南シナイを焦点とするであろうとのことです。

その意味では今回のエルトウル(シナイ半島南部の都市。数日前に治安支部が襲撃され4名が死亡)での自爆攻撃の意味が大きいとのことです。
記事は、観光に対するテロ攻撃は、80年代、90年代における過激派の観光地、外国人観光客に対する連続的なテロ活動を想起させるが、今回が当時と異なっていることは、リビア革命後のカッダーフィ政権の武器がエジプト国内に広く行き渡っていることであると警鐘を鳴らしています。
(中東の窓 10/9 al arabia net の記事の要約)

上記記事では、テロはイスラム過激派によるものとされ、
ムスリム同胞団との関連性などひと言も触れられていない。
しかし、一方では暫定政権による「同胞団=テロ組織」のプロパガンダがあり、
テロが同胞団の弾圧の口実にされている。
思うのは、軍・暫定政権が取り組むのは、
同胞団つぶしよりまずテロ対策ではないのか、ということだ。

政権として当面行うべきテロ対策はこれら過激派の組織的撲滅作戦と、同胞団の多くの者がそちらの方向に走らないような政治的解決の模索ではないか。
現政権のやり方は本当の敵を徹底的に叩くよりは、大きな力を同胞団たたきに費やすと言うことで、むしろテロの危険性を増大させているように思われます…。(同ブログ)

その通りだと思う。

以前、鈴木恵美さんだったか、エジプトはシリアのようにはならない、
何故なら武器が入っていないからだ、と分析していた。
だが、エジプトの西隣はリビアである。
カダフィ政権崩壊で溢れ出た武器は、
アルジェリアやマリの武装組織にだけ流れたとも思えない。
エジプト国内の武器の氾濫

最近過激派集団から摘発した武器の量が注目を浴びているが、治安関係者はこれらは未だ初期の段階で、今後さらに近代兵器等が摘発されるケー スが増えてくるであろうとして、エジプトは武器の氾濫による国内治安の壊滅を味わった周辺諸国と同じ危険という、これまで未知の水域に入ったとのことです。
最近摘発された武器は小銃類、RPG,手製の爆薬類(これは市販の薬品を使えば容易に自宅で製造可能の由)等であるが、さらにこれに4輪駆動車、ミサイル等の新式の武器も加わったが、これらはリビア国境からエジプトに流入したものの由。
これらの武器の大部分はシナイ半島に隠されているが、約4分の一はエジプト各地に散在している由。このため治安当局者は、当面各地でのテロを撲滅することは困難と見ている由。
(中東の窓 10/9 al arabia net から )

そして、アメリカの動きだ。
決して「クーデター」と呼ばず、経済(軍事費)援助もこれまで通り、
という慎重路線を貫いてきたアメリカが、
ここにきて方針を転換したのだろうか。
CNNが昨日、「米政府、対エジプト軍事支援を打ち切りへ」と報じた。
今日の日本のメディアでは打ち切りではなく
「凍結」あるいは「一部停止」となっているけれど。

アメリカ政府の高官は9日、検討の結果、予定されていたF16戦闘機や攻撃用ヘリコプターなどのエジプト軍への引き渡しや、およそ2億6000万ドルに上る財政援助を凍結すると発表しました。一方で、軍が主導するエジプトの暫定政府との協力関係は維持し、テロ対策などの分野で支援を継続することにしています。
(NHKニュース 10/10)

以前、ヨーロッパの援助に対してサウジアラビアが、
もし打ち切るなら肩代わりする、という声明を出した。
世俗リベラルの若者組織からも、アメリカの援助は辞退するべきだ、
との発言もあった。
だが、実際にアメリカが援助を凍結したらどうなるのか。

本当にアメリカは、中東・アフリカにおける覇権よりも、
自国の財政優先にかじを切るのだろうか。
それでイスラエルは納得するのか、という疑問もある。

少し前にはこんなニュースがあり、
希望が見えたような気がしていたのに、
混迷は一層深まっているようにも見える。
エジプト:12カ国がエジプト観光禁止を解除
(日本語で読む中東 Al-Ahram紙 10/2)

アイルランドを含む12か国がエジプト観光禁止を解除し、
ドイツ人観光客1000人が空港に到着した、
今後についても観光客が戻るような施策を取る、との内容だ。

観光大臣は財政金融会議(GTM)の席上で「観光省は次の段階の計画を持っている。その計画は、外国で広まっているエジプトに対する心理的な不安定のイメージを取り去る強力なPRキャンペーンが主軸となる。フライトのコスト削減に加えて、ツアー企画関係者とともに観光分野の刺激を促す活動を行う」と付け加えた。

だが、まずは治安だろう。
治安が回復してこそ、経済も復興に向かう(観光産業では特に)。
暫定政権も同胞団も、今こそ自分たちが目指すところを再確認してほしい。
内戦が過激派を磁石のように引き寄せ、国家存亡の危機を招く例は、
すぐそこのシリアにあるのだから。
ムスリム同胞団が、イスラムによる共同体樹立という目標の前に、
エジプトという国を捨てているとは、思いたくない。

 

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