長い時間をかけてやっと読了。
カプリ島のヴィラ・サン・ミケーレの物語。
読み終えて裏表紙を見て驚いた。
開高健の賛辞!
この医師の物語は人の痛苦を伝えながら静謐である。洗われた石のように簡潔で確実なリアリズムのなかに何の苦もなく幻想がとけこみ、知恵と親和のユーモアが爽やかな縞となって光っている。猥雑と狂気のひけらかしに夢中な現代にこの『サン・ミケーレ物語』の主人公の不屈の苦闘の物語は臨終の酸素であろう。この世界的名著が欧米の評判作に目のない日本の読書界に何故紹介されなかったのか。それがふしぎである。何日もかけて樹液のようにゆっくりと吸い上げられたい本である。
ナポリ湾を望む見晴らし台から、海を見ていた御影石のスフィンクスが目に浮かぶ。19世紀のヴィラは、もとはローマ時代の(ティベリウス帝の)別荘だった。
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