超久しぶりにMovable Type について考える機会(後述)があった。
それで初めて知ったのだが、
MTにもあらかじめMTをインストールしたMovableType.netが用意されていた。
専用レンタルブログサービスで、Wordpress.com みたいなかんじ。
自分でサーバーにMTをインストールしなくてもいいし、
管理はおまかせで、だからアップデートもしなくていい。
2015年2月にリリースし、進化を続けているという。
あのとき、なぜ MovableType から WordPress に引っ越したのか
既に自サイトはWPに引っ越していたのだが、2014年2月、友人たちと運営していたサイトもMTからWPに引っ越した。WP移設をプッシュした最大の理由は、私が運営から離れた後、それまでのように専任で面倒を見られないので、メンバー各自に自分のブログは自分で管理してほしい、というものだった。
MTのアップデートは、FTPでつないでそれなりに神経を使いながらやらなければいけない。更新の頻度は少なくてもハードルは高い。実際更新時に不具合が生じることもあった。けれども、WPであれば管理画面からワンクリックで更新出来る。トラブルになったこともない。
おまけに、WPは再構築が不要なぶん何をするにも気が楽である。友人サイトは投稿時だけでなく、ビジターのコメント入力(けっこう長いコメントが入るサイトだった)でもしょっちゅう再構築エラーとなり、いいかげんもうごかんべん、という気分であった。
このとき引っ越し先として、管理不要のWordpress.com も考えないではなかった。が、独自ドメインとプラグイン追加が不可(有料であれば可)、及びマルチブログが難しいのがネックであった。メインサイトにブログが4つぶらさがる重層構造だったからだ。思案の末、借りていた同じサーバーに複数のサブディレクトリを作成し、それぞれにWPをインストール、ListCategoryPostsやRSSImportなどのプラグインでMTと同じ構造にする、という方法を選んだ。
訪問者にはテーマデザインが変わったくらいで問題はないし、当初は順調であった。このまま行くだろうと思ってもいた。が、落とし穴もあった。
WordPressで思い知ったセキュリティリスク
利用者が多いWPはセキュリティホールを突かれた攻撃も多い。友人サイトも二度改ざん被害にあってしまった。一度めは私がファイルパーミッションを甘くして作業した後(サーバー仕様で、甘くしないと管理画面で作業できなかったのだ)、元に戻すのを忘れたため。二度目は私が離れた後の、WP4.7.1の脆弱性によるハッキングであった。
友人サイトの問題は、次第に動きが少なくなり、それぞれのブログ運営者が管理画面に行くことも少なくなり、ということは更新が滞るようになっていたこと。WPは都度の更新が必要で、放置によりセキュリティリスクが高まってしまうのだ。
ところで、このたびMovableType(とWP)について再考したのは、某サイトから過去記事の紹介を打診されたのがきっかけだった。大昔に書いてそのまま忘れていた記事である。
Movable Type と WordPress 超個人的比較・感想
紹介はありがたいけれどあまりに古くて申し訳なく(だってMTもう全く触っていないんだよ私)、追記するために最近の状況を少し調べたのだ。
紹介していただいたサイトの記事はこちら。
MovableTypeを導入したときに参考になる記事まとめ
記事のアップ後にじっくりサイトを眺めて驚いた。「Web業界のエンジニア、デザイナーのスキルアップに役立つコンテンツをお届け」とある。てっきり一般的な転職応援サイトかと(だから素人の記事が良いのだろうと)思っていたのが、その道のプロ相手であることと、記事にはあの「小粋空間」さま(最高敬称)も紹介されていて少々ビビった。随分お世話になったテクニカルライターにして超有名MTお助け人の老舗サイトである。そのようなサイトと同席するなんてなんとおそれ多い!
追記にあたって、WPのデメリットとしてどうしても触れておくべきだと思ったのが、上記のような改ざんリスクである。極端な話し、きちんと更新できない人がWPを使い続ける(=放置する)のは、Web社会においては大きな問題であろう。つまり、動きが少なく、放置気味で、かつWP知識(を学ぶ時間や興味や気力)の無い(友人たちのような)人が運営するサイトは、管理お任せサーバーのほうが良いのではないかと。
MovableType.netの優位性
友人サイトにWordpress.comは使えない、とあきらめていたのだが、もしあのときMT.netがあったら…。当時はWPのセキュリティリスクをそれほど深刻に考えていなかったにしても、かなりの確率で、なじんでいたMTタグで引っ越し作業ができ、かつその後管理に一切気を使う必要のないMT.netを選択したのではないかと思う。
おまけに、なんと! MovableType.netには再構築がない。もちろん、マルチブログはお手の物。テクニカルサポートもついている。友人サイトにはメリット多くてデメリットほとんどなし、なのである。強いて言えばテーマデザインの問題と、運営経費が若干高くなることくらい。
ちなみにMovableType.netは、月2,100円(年払い)のライトプランでも、容量5GB、ブログ数5、ユーザー数5、フォーム1、もちろん独自ドメインOK、かつ常時SSL化OKと、友人サイトには充分かつぴったりな内容である。
Movable Type.net
サイト制作のプロの方も、「制作会社に依頼することが前提で、カスタマイズや管理を全く自分ではしたくない人」にはMovableType.net がおすすめ、と断言している。
MovableType.net とは?| ウィゾ・プロダクション
上記ウィゾ・プロダクションの記事にもあるように、WPにしろMTにしろ、仕事か如何かを問わず、他のために作成したサイトは、(有料で)管理にかかわり続ける場合以外は、ずっと面倒を見続けるということをしない。けれども作った者としては、更新やセキュリティは気がかりなのだ。MovableType.netであれば、作った側のその後の心配や負担も減る。友人サイトをガンガンに作り、その後運営を離れた私としては、この心配や気がかりがすごくよくわかるのだ。
何故WPからMTへの移設が少ないのか
実際にWPからMT.netに引っ越した事例を知りたくて検索してみた。が、ほとんどヒットしない。あまりにWPがのしてしまい、MTが個人ブログやCMSサイトの第一選択肢から外れて久しいからか(ただし、プロが商用サイトを構築する場合はこの限りではない模様)。あるいは、WPで運営している人にさしたる不満がないためか。しかも競争相手のWordpress.comは無料だし。
逆に、MTからWPに引っ越したという話は多い。どうやらWordpressからMovabletypeへという流れにはなんらかのハードルがあるようだ。
つまり、管理いらずといってもそれなりの引っ越し作業はあるわけで、プラグインでエキスポート→インポートまでは簡単でも、(特にカスタマイズしている場合)引っ越し後の調整にMovable Type のテンプレートタグやHTML&CSS等それなりのスキルも必要だ。素人が試してみようと思うときの最初の心理的障壁「難しそう」が大きいのかもしれない。
ウィゾ・プロダクションも、自力でMT.netにサイトを開設したいという人にMT知識を教えても、なかなか開設にまで至らない、従って開設までは自社で請け負うことを基本前提にするようになった、という。友人たちも自力で移設するかというと…、しないだろう。というか、出来ないだろう。
では私はというと、もう一度MTに移設する気力は(今は)ない。なにせつい最近、改ざん防止のために友人たちにサーバー引っ越しを勧め、勧めた手前私がWP移設作業を買って出て、作業完了したばかりなのだ。
次に何か問題が出てきて引っ越したほうが良いとなった時、もし私に手を差し伸べる気力体力知力がもう失われていたら(というかMT知識を忘れている可能性大だけれど)、プロを頼っての引っ越しを勧めることにしよう(いくらぐらいするのかしら)。
WordPress.com という選択はないのか?
実は気分としても、MTを離れてWPになじんでしまうと、さかのぼってもう一度MTに戻るのがなんとなくおっくうである。たぶん触れば感覚や記憶も戻って、進化に驚いたりもするのだろうが。
では本当にWordpress.comという選択はないのか? こちらだって進化もしているだろうしと、無料版をちらりとのぞいてみた。使えないことはない。が、あきらめなければいけないことも多い、ということがわかった。たとえば…
・テーマは今使っているものは使えず。MH Magazine Lite のように、ウィジェットでフロントページを制御できるものがあるかどうかは不明。
・プラグイン:Jetpackの一部の機能しか使えない。
→ ただし、Display Posts Shortcode(知らなかったのだが、これでプラグイン ListCategoryPostsがいらなくなるかも)で、カテゴリ別に記事をリストアップできる。オーダーも昇り下り順の制御が可能だし、これなら4つのブログをカテゴリに割り振れば、似たような体裁にはできる。
・パーマリンクをカスタマイズできない(有料版だとできるのかは不明)
・一番のネックは、独自ドメインとカスタムCSS編集が使えないこと。直接CSSを指定することも出来るかと思ったが、ショートコード等の制御は無理そう。ということは、レイアウトデザインは完全にテーマ依存で、カスタマイズはあきらめなければいけない。
パーソナルプラン(月360円)であれば独自ドメインは利用できるし、容量も3GBから6GBに増えるし、広告も非表示となる。CSSをあきらめるならこのプランでも行けるかもしれない。
が、つらいものはある。やはりプレミアムプラン(月983円)かな、とも思う。これならパーソナルプランに加えてテーマの選択肢やグレードもアップするし、CSSもカスタマイズ可である。現行レンタルサーバー代と変わらない料金というのもGood。
WordPress.com>価格
それでも、あきらめなければいけないことはある。プラグインで制御している部分を別の方法(ショートコード等)に置き換えるにしても、全て同じようにはいかないだろう。もう一つのネックは、友人サイトが、HTMLで作った静的なページを組み込んでいるということだ。
今のサーバー(wpX)では、WPだけでなく、画像やデータを格納するディレクトリを作成できるので、HTMLファイルもサーバー内に置いている。これをどうするか。解決策としては、ドメイン管理のスタードメインでサーバー1GBが利用できるので、アドレスは独自ドメインからは外れるけれど、そちらに設置する、という方法(この件事情があって、今更数百ページをWPにコピペするかというと、運営者本人もやらないだろうけれど、移設のたびに、最初からMT化していればどんなに楽だったか…と思わずにはいられない)。
MT.netでもこの問題は残るのだが、今機能を見たら6Mまでのファイルが添付できるとあった。もしかしたらこれで対応できるかもしれない。やはり経費をかけられる場合はMT.netか…。
あらためて、管理お任せサーバーを検討すべき人は…
ウィゾ・プロダクションでは、最初はWordpress.comやMovableType.netで始め、サイト規模が大きくなったらサーバーインストール型、もしくはクラウド版への移行を勧めている。もちろん成長の正しい方向であるが、私が勧めるのはその逆である。
サーバーを借りてサイトを作ってみたものの、だんだんかったるくなってきた。でもたまには訪ねてくれる人もいるし、せっかく作った場をそう簡単に閉めたくはない。何よりコンテンツとしても残しておきたい。そんな人のMovableType.net(もしくはWordpress.com)への移設、である。
考えてもみてほしい。繰り返しになるが、自分のサイトがハッキングされれば、コンテンツが失われるだけではない。せっかく訪ねてくれた人たちを詐欺サイトに飛ばしたり、マルウェアをばらまくことになるのである。被害が甚大であれば、信頼も失われてしまう。まして被害を被った人が友人知人であれば、申し訳なさは計り知れない。
ヒトゴトではなくて、自分の能力が衰えてきて管理に自信がなくなったら、早めに運営管理のダウンサイジングを考えることにしよう。ただし、引っ越し後の調整作業はかなりありそうなので、自分でできるうちでないといけない。が、その判断を作業ができるうちにできるだろうか…。
追記:MovableType.net も触ってみた
WPからMT.net引っ越しの事例があまりに少なく、これはもう自分で遊びに行くしかないかと、14日間無料のお試しに申し込んでみた。あっという間にアカウントが出来て、WPのエクスポートからインポートしてみた。以前これを逆にやった時よりインポートに時間はかかった。が、メールチェックなどをしていたら「完了したよ」とメールが届いて、まあそれほどではないな、というかんじ。
最初の感想は「早っ!」であった。あのMT名物再構築がない、というだけでなく、管理画面もサイトのページも、サ(サッより速い)と遷移する。
次の感想は、「管理画面これだけ?」である。ヘッダー画像はどうやって変えるのだ、メニュー項目はどうするんだよ、サイドバーのウィジェットはぁ!? と立ちすくんだ。
そうか、ここか、WPからMT.net引っ越しのハードルは。確かに(WPのライトユーザーで)初めてMTに触れた人には荷が重い。MTタグ+HTML&CSS スキルが必須なのだ。WPは、とりあえず何も知らないでも、メニュー項目もヘッダー画像も、サイドメニューもカスタマイズできるもんね。
14日後の引っ越しは100%無いけれど、それはこのハードルのためというよりも、現行のWPに何の問題もない上に、やはり色々あきらめなければいけないものがありそうだから。ではあるが、せっかくなので少し遊んでみよう。何をあきらめなければいけないのかも、クリアになるだろうし。
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