選択的夫婦別姓が一瞬動きかけて、
再び足踏み状態に落ちてしまったこのタイミングで、
またまた旧姓利用で消耗した話。
昨年は色々整理し、仕事は副業だったハンドメイド一本となった。開業にあたって、屋号+旧姓名義での銀行口座開設であれこれした話は二年前に書いた。
旧姓証明書が取得できるようになっていた
クレジットカードも銀行口座も名義変更する前のものがある。てこずったけれど仕事用の口座も旧姓で開設できた。ショッピング等日常生活のほとんども、仕事も友人づきあいも旧姓である。がしかし、100%旧姓利用では生きていけない。どうしても戸籍名でないと通らない場面があって、結果両方を使い分けることになる。
病院で、税務署で。慣れたというより仕方ないとあきらめて30年。パスポートも長く戸籍名のみで、おかげで海外旅行用にクレカもつくった。二つの姓を使っていると、色々なサービスアカウントで、自分がどちらの姓で申し込んだのか忘れてしまうことも多く、えーとあたしって誰だっけ? と問い直すこともしょうちゅうで、でもこれにも慣れた。
宅配便も郵便物も旧姓戸籍名どちらも誤配なく届く。配達員も自然に、二つの姓が同一人物と認識するようになってくれた。ひっかかるのは、どちらでもいいやというショッピングアカウントなどと違って、新たに何か役所などに登録するような場合。あきらめていない場面で、である。今回は警察が相手であった。
昨年秋、仕事で必要性を感じ、古物商の免許を取ることにした。免許の名義は旧姓が望ましい。サイトWho is 情報をはじめ、ショップ管理者名も登録者名も売上振り込み口座も旧姓なんだから。
警察署に問い合わせると、旧姓併記が可能という。住民票に旧姓が記載されたものを提出せよと。実はこの時点でことが良くわかっていなかった。住民票に旧姓が記載されましたっけ? と問うても、市役所の管轄なので詳細はわからない、と署員も言う。
近所のサービスセンターで住民票を取った。記載は無い。窓口の担当者に理由を訊いても不明(市役所であればその場で解明され、料金は二重にかかったとはいえ、即日取り直しができただろう)。旧姓名義の銀行口座開設では戸籍抄本の追加提出で旧姓確認を行った。それでとりあえず戸籍抄本もとって警察へ。
管轄の警察署窓口でもてこずった。若い署員が初めてのことのようであちこちに電話確認し、戸籍抄本は必要書類として認められていない、とにかく住民票を出せと言い張る。すったもんだした挙句、旧姓表記の住民票は市役所に申し出れば取得できるることが判明。
結果、「旧氏記載・変更・削除請求書」を提出し、即旧氏欄に小さく旧姓の載った住民票を取得。古物商も、めでたく旧姓が併記された許可証を手にすることができた。
この制度、不覚にも知らなかったのだが、令和元年11月に施行されていた。
住民票、マイナンバーカード等への旧氏の記載等について(総務省)
住民票、マイナンバーカード等へ旧氏(きゅううじ)を併記できるようにするための住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令が平成31年4月17日に公布されました(平成31年11月5日施行。)。この政令改正は、社会において旧姓を使用しながら活動する女性が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなるよう、との累次の閣議決定等を踏まえ行われたものです。
これにより、婚姻等で氏(うじ)に変更があった場合でも、従来称してきた氏をマイナンバーカード等に併記し、公証することができるようになるため、旧氏を契約など様々な場面で活用することや、就職や職場等での身分証明に資することができるものと考えています。
上記ページには、こんなときに役に立つと二つの例があげられている。
- 各種の契約や銀行口座の名義に旧姓が使われる場面での証明
- 就職・転職時などの仕事の場面での旧姓による本人確認
しばらく前、マイナンバーカードに旧姓を併記できるようになった、という新聞記事は読んだ。その記事に、住民票への併記についても記載があっただろうか? これは記憶にない。ほとんどアナウンスされてないんじゃないのか。
旧姓使用拡大は選択的夫婦別姓回避のため?
昨年末にかけて審議されたのが、第5次男女共同参画基本計画にどう選択的夫婦別姓について盛り込むか。自民党女性議員だけでなく、自民党若手男性議員も賛成、菅さんもかつて賛成していたとの報道もあり、少しは前に進むのかとわずかの期待を抱いた。
結果、
2021年度から始まる第5次男女共同参画基本計画の案から「選択的夫婦別氏」という文言が消えた。法制審議会が選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申して四半世紀近くたつ。夫婦が同姓か別姓かを選べる制度を求める声は高まっていたのに、
選択的夫婦別姓のハードルは? 計画案から表現後退、議論進まず四半世紀
(NIKKEI STYLE 2020.12.30)
法律では男女いずれかの姓に、となっているのに、現実は96%が男性の姓を選ぶ。ということは、法律以上に厳しい暗黙の掟があるからに他ならない。このように結婚で男性の姓への改姓を強いているのは、世界では日本だけである。
世論調査では選択的別姓容認派が確実に増えてきている。にもかかわらずのガラパゴス。「男女共同参画」の名前が泣くような後退である。反対勢力がどれだけ強硬なのか。
別姓を求める人たちや事実婚を選んだ人たちは、「絆は別姓なんかでは壊れない」と言う。同感である。反対派、つまり同姓でなければならないという人たちだけが「壊れる」と主張する。そもそもこれがおかしい。別姓を選んだけれどうまくいかなかった、やっぱり同姓でないと家族になれない、というならまだわかる。別姓で生きたこともない人が、どうして「壊れる」と決めつけることができるのだろう。説得力ないでしょう。
日本以外の他の国はもちろん、日本であっても、「別姓で家族が壊れた」というような証拠はないだろう。壊れたのは本人たちの日々の暮らしの中で生じた齟齬が原因だと、誰もが知っている。原因は形や枠組みではなく、内実にあるのだ。
「壊れる」派は「日本固有の伝統的な家族制度」と戸籍制度を後生大事に思っているらしい。でも、選択的別姓を求める人たちは、戸籍制度を否定しているわけではない。ま、それはそれでいいからさ、というスタンスがほとんどだと思う。 自分たちはこちらの道を選びます、あなたたちはご自由に、というだけのことなのだと。
先日の朝日新聞に気になるコメントがあった。
(フォーラム)夫婦の姓、どう考える:2 望ましいかたちは(2021.1.24)
選択的夫婦別姓に反対する理由は二つあります。一つは、民法を改正しなくても、旧姓使用を拡充すれば多くが解決できるということ。もう一つは、現在の戸籍制度の下では、導入が難しいということです。
現在は、結婚すると親の戸籍から出て新たに夫婦の戸籍を作り、子どもたちもそこに記載されます。婚姻届を出す際に戸籍筆頭者を決め、家族が共通の姓を名乗るのです。「1戸籍1氏(姓)」ですね。これが別姓になると、「1戸籍2氏(姓)」になり、家族共通の姓がなくなります。姓が「ファミリーネーム」から「個人名」に変わってしまうということです。姓の性格の変更は、同姓を選んだ夫婦にも波及し、国民全体の問題になります。別姓を選びたい人だけの問題ではありません。今の戸籍の仕組みを前提とする限り、法制化は困難なのです。
専門家が煙に巻こうとしてると感じるのは私だけだろうか。旧姓利用がそう簡単ではないことも知らず、女性だけに不便と負担をおしつけている現実にも目をつぶったコメントだと思う。それより素朴な疑問、「1戸籍2氏(姓)」と「1戸籍1氏(姓)」の人がいて、本人たちがそれでよいというどこが問題なのか。「姓の性格の変更は、同姓を選んだ夫婦にも波及し」というのが全くわからない。
そもそも、ファミリーネームという呼称あるいは認識は、(日本国内で)日常的なものだろうか。「○○家」という家父長制の意識はまだ残っているだろう。でも今更「○○家」を前面に出すのはいかにもはばかられる。それで「ファミリーネーム」と言い換えてみたのかしら。
もう一つの疑問。一つの姓でなければファミリーを維持できない、つまりある種の強制性にしがみつかなければならないほど、日本のファミリーは脆弱なのか? そうなのかもしれない。もしそうだとすると、むしろ脆弱性を憂える人たちにこそ問いたい。同姓であるだけでファミリーは強くなると、本当にあなたたちは信じているのか?
相方に対して個人としての尊重や敬意が無く、相方の耐えている痛みや、被っている不条理や不利益に対する想像力を抱けない、つまり片方のみがアイデンティティーの揺らぎや生きにくさを感じている、メンバーに平等性がない、そんなファミリーを形だけ維持することのほうが、むしろファミリーを脆弱にするのではないのか。
とはいえ、選択的夫婦別姓に賛同する人は確実に増えてきている。この人たちは古くなった制度にしがみつくことの弊害を体感で感じているのだと思う。制度を変える「困難」よりも、現実に合わなくなった制度で生きる困難を理解している。ヒトが生きやすい社会は自分も生きやすいのだと。
戸籍制度が導入された明治(1898年)から100年余り。伝統的家族制度というには短いたかだか100年。法制度としては、そろそろメンテしなきゃいけない100年、ではないだろうか。
上記コメントでは「旧姓使用を拡充すれば多くが解決できる」とある。日常的に旧姓を使うということは旧姓で生きるわけで、家庭でも旧姓である。実質的旧姓使用が進めば進むほど、姓はファミリーネームではなく個人のものになる。制度を変えずに現実対応すればよい、という回避策でも、反対派が恐れ、忌避する事態は進むと思われる。
国連から三回も是正勧告を受けていることもあり、世論の高まりに説得力のある理路や証拠も出せず、仕方ないから回避策を打ち出した。でもできれば現状で行きたい、だから住民票が旧姓証明書になることもそれほど宣伝しない、そんな本音も透けて見える。
本当にいいかげんそろそろあきらめたら、と思う。でも強硬派はどんどん先細るだろうから、5年先を見据えて当面じゃんじゃん旧姓を使うしかない。法制度と現実の乖離がもっともっと大きくなれば、ガラパゴスもいつかは開国せざるを得ないだろう。
こんなことを考えたり書いたりしていたら、仕事用に使っているジャパンネット銀行(旧制名義)からメールが来た。お客さん、ビジネス口座を開きませんか。 PayPayからの入金は無料、他にも優遇措置がありまっせ、という。
二年前頼んだ時にはあんなにそっけなかったのに。でもこれは、旧姓利用と知ってのことじゃなくて、個人口座の動きにビジネス性を読み取ってのことだと思う。けれども、実績があって違法性がなさそうであれば、彼らにとっては旧姓でも何の問題もないはず。
かくしてさらっと申し込むとあっという間に受付完了。屋号+旧姓のビジネスアカウントが(向こうから)飛び込んできた。旧姓で生きやすくするためには、とにかく旧姓を使い続けることが大事と思った次第である。
(追記訂正/2021.2.24)
上記ビジネス口座開設勧誘メールは、JNBからではなくヤフージャパンからであった。仕事で使う材料や消耗品はヤフーショッピングで買うことが多く、ヤフーカード払い、引き落としはJNB個人口座としている。売り上げ入金もJNBだし、これら一連の動きを見ての勧誘だろう。
ちなみに口座名義だけでなく、ヤフーID、カード名義とも旧姓である。こちらでも強調しておきたい。入籍後も旧姓利用を考えている方、名義変更は最小限にとどめ、旧姓のアカウントや本人確認に利用できるもの等、極力保持するようおすすめする。
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