『蜘蛛の家』 ポール・ボウルズ

この作品がボウルズの代表作というのは本当だった。
あのボリュームを三日ほどで一気に読む。
そんなスピードで読むにはもったいない本なんだけれど、
ページを繰る手が止まらなかった。
これは再読、いや何度も読みたい本。
でも絶版の上、古書が高い(アマゾンで5,000円以上…)。

すばらしいのは背景描写だけではない。
(松岡正剛は、ボウルズは背景を主役に出来る、
というようなことを言っている。)
イスラム社会とイスラム精神に対する深い理解、人物の造形、
そして彼らのディスコミュニケーションの描き方の絶妙さ!
西欧国家の身勝手さだけでなく、
人間の身勝手さに対する痛烈な批判は、自らにもむけられている。
鼻持ちならない独善的な善意の持ち主リーだけでなく、
アムールの味方かと思われたイスティクラル党員ムーレイ・アリや、
アムールが自分の理解者として、
最後には友達とまで慕う作者の分身であるステンハムさえ、
容赦なくアムールを見捨てるのだ。

モロッコのフランスからの独立戦争を、
フェズの緊張高まるひと夏を舞台に濃密に描いたこの作品は、
今に通じるその後の西欧とイスラム社会の問題の、
核のようなものも描き出していると思う。
ベルベル人が、フランスの分断政策でフランス側について戦ったというのも、
初めて知った。
これもまた、現代に通じる禍根であることは確かだろう。

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