シリア 安保理化学兵器廃棄決議、その後のこと

国連安保理が、シリアの化学兵器廃棄の決議を採択した。
安保理、シリア決議を採択 10月から化学兵器査察 (読売新聞 9/28)
・対シリア:米英仏、圧力に手応え 安保理決議案  (毎日新聞 9/27)

これは、シリアをめぐって国際社会がひとつの合意に達した、
という意味では大きな一歩ではあるのかもしれないけれど、
ここに至るまでの犠牲の大きさと、
この後の和平の見通しが依然として見えないことに、
暗澹とした気持ちになる。

以下、目についた記事のメモ。

今後の展開に明るい見通しが持てないとの記事。
内戦が10年続いたら、あの国はどうなってしまうのだろう。
シリアだけのことではない、中東全体が一層不安定になるということだ。
・シリア情勢:内戦10年以上続く可能性も 英の元大使 (毎日新聞 9/27)

 −−内戦の行方は?

◆アサド政権、反体制派ともに相手を打倒することはできない。政府軍に対してはロシアなどが影響力を行 使できるが、(反体制派内の)数千人にもなるイスラム過激派戦闘員は誰にもコントロールできない。だから内戦は10年以上続く可能性がある。私は中東に関 わって50年になるが、これほど難しい状況を見たことはない。

以下は、シリアがいずれかの勝利に終わったのちの、
過激派の動向に対する懸念。
アフガニスタンでアルカイダが成長し、
新たなテロの流れが生まれたことを思うと、
シリアの状況はアフガニスタンより懸念材料は多いような気がする。
プーチンシリアのテロリスト中央アジアへ移動と警告 (中東TODAY 9/27)

プーチン大統領はシリアで今戦闘を展開している、イスラム過激派を中心とするテロリストが、やがては中央アジアに移動し、そこで新たな戦闘を展開するという予測だ。
その候補地はタジキスタンを始めとする、アフガニスタンに、隣接する国々であり、ロシアはそれを防止するために、これらの国々に協力を余儀なくされるだろうという内容だ。

シリアという戦闘地を失った後、これらのテロリストがトルコ国内で戦闘を展開する、あるいはテロ活動を展開する可能性は高いだろう。現段階でもPKK(クルド労働党)のゲリラが、トルコ国内では臨戦態勢を崩していないのだ。
加えて、シリア北部のクルドやイラク北部のクルド、そしてトルコのクルドとの間の連帯が生まれつつある。シリア国内で既に始まっている、クルド人とイスラム過激派テロリストとの闘いが、今後激化して行けば、彼らの戦場はシリア北部とトルコ南東部にまたがるのではないか。

シリア情勢の影響を受ける周辺諸国 (同 9/28)

国連での、シリアの化学兵器をめぐる討議が、結果的にはロシアや中国が押す考えに、まとまりそうだ。つまり、アメリカが希望していたシリアに対する空爆は、国際社会が認めないという方向だ。
それはアメリカにとってだけではなく、これまでシリアに敵対的に関与してきた、周辺諸国にとっても大きな不安を呼ぶものとなっている。サウジアラビア、カタール、トルコがその典型であろうし、イスラエルにとっても、少なからぬ影響が及ぼう。

こちらの記事は、金融資本主義から見たシリア情勢。
世界は今や本当に金の動きに従って動いているのかもしれない。
オリンピックも、シリアも。
安倍総理も知らない、シリア問題の真相(上)
安倍総理も知らない、シリア問題の真相(下)
(インテリジェンスのプロ、原田武夫氏が開く近未来の扉 | 東洋経済オンライン)

反政府側のイスラム武装組織が「国民連合」参加を拒否している。
和平への政治的な解決を目指す動きは、それでも出てきているし、
これをやらなければシリアの混迷は深まり、
地域の安定も遠のくばかり。
だが、その時問題となるのは、アサド政権側に対してどのような勢力が
テーブルに着くのか、ということだ。
シリア:武装諸大隊、「国民連合」の傘下入りを拒否 (al-Hayat紙 9/26)

『混迷するシリア』の著者青山氏は、
ブログとFBでシリア情勢を発信している。
2011年からの”シリアでの「アラブの春」をめぐる動きを
より網羅的に把握・紹介することをめざす”もの。
・シリア・アラブの春(シリア革命2011)顛末記
同Facebook版

9月26日 反対勢力の動き
ザマーン・ワスル(9月26日付)は、シリア国内のサラフィー主義武装集団が、「ムハンマド軍」の名で統合をめざしていると報じた。

この動きは、シリア革命反体制勢力国民連立による「シリア国民軍(中核)」の創設に向けた動きに対抗して4ヶ月前に始動したという。

ヌスラ戦線をはじめとする13の武装集団が、シリア革命反体制勢力国民連立を拒否する声明を出したのも、この動きの一環だという。

「ムハンマド軍」には、シャーム自由人大隊、イスラーム旅団、タウヒード旅団などの参加が見込まれ、その兵力は約50,000人に達し、スンナ派戦闘員のみから構成され、2014年末までの結成をめざすという。

酒井啓子さんは、一気に流動化した感のある中東情勢を、
「90年代に逆戻りしたのではないか、とのデジャブ感に襲われる」と書いている。
エジプト、シリア、ケニア、イラン:90年代の再来?
(Newsweek中東徒然日記 酒井啓子 9/25)

シリアはイラクの二の舞なだけではなく、アフガニスタンの二の舞化もたどっている。反政府勢力のなかにイスラーム武装勢力が大量に流れ込んでいることは自明で、かつてターリバーン政権下のアフガニスタンがひきつけてきたように、今やシリアが武闘派の磁場になっている。90年代にターリバーン政権を国家承認していたのはサウディアラビアとUAEなどごくわずかだったが、今シリアの反政府勢力を堂々と支援しているのは、そのサウディアラビアだ。

つまり、今のデジャブ感が思い起こす90年代とは、こうなのだ。「イスラーム勢力の台頭に対して中東や域内の諸政権がこれを弾圧し、国際社会もまたとってつけたような散発的な軍事攻撃や制裁以外に対応のすべをもっていなかった結果、過激派が武闘路線を強め、国外に攻撃対象を求めて、最終的に9.11につながった」、と。

デジャブ、といえば、期待が持てる「いつか来た道」もある。イランだ。
・・・
ロウハーニとオバマが直接会談し、米・イラン関係に進展が見られれば、国際政治的には大きな一歩だろう。だが、直接対話の場ができたら日本が仲介する余地は、なくなる。中東と米国の間で、日本の役割はいったいどうなるのか、誰か真剣に考えているのか?

周辺国に脱出した難民の問題も深刻化している。
シリア難民キャンプで見た5つの事実 (ナショナルジオグラフィック 9/24)

 

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