『彼女の「正しい」名前とは何か』 岡真理

『彼女の「正しい」名前とは何か』 – 第三世界フェミニズムの思想
岡真理 青土社 2000.9.18

岡さんの本は、これまで2冊ほど読んで感銘を受けていたので、
エジプトでイスラムの女性についてあれこれ考えた後だけに、
このタイミングで読むべきかな、と。

基本的には以前読んだものと同じ視座。
ただ、文体が……。
もっと噛み砕かれていたらいいのになあ。

差別の構造は高きから低きへとむかっていること
(&マトリューシカ人形のように、外から内へも、ですよね)。
だから、自分が立つ位置によって、私たちは加害者でもあり、
被害者でもあること。
ゆえに、自らの加害者性に対する自覚もなしに、
イスラム(第三世界)の女性に対する性差別に無邪気に言及することは、
植民地主義であるという指摘。

まったくもってその通りなんだけれど、
ぎりぎりと突き詰めていくだけでなく、
無邪気なアプローチなんてのも必要な気がする。
私たち日本の一般感覚では。

だって、イスラムや第三世界の女性たちについては、
あまりに情報がなくて、だから関心もなくて、
彼女たちに対する理解は、限りなく薄っぺらいんだから。
突出した岡さんみたいな人が、こんなふうに先頭を走ってくれて、
そのあとを、無邪気でもなんでも(それがたとえ植民地主義的であっても)、
裾野であれこれするのも必要かな、ということです。

ベールについては、女性器切除や慰安婦問題の前に、
さしたる問題ではないかのようにほとんど触れらていないけれど、
初心者としては、そのあたりから始めなくちゃいけないんだよね。

それと、慰安婦問題をめぐっての上野千鶴子批判に、少し考えさせられた。
岡さんの原理的ないらだちはわかるけれど、
この部分って、そこまで腑分けしなくちゃいけないのかな。
でもきっと、しなくちゃいけなんだろうなあ。
上野さんと信田さよこさんみたいに、
批判しあいながらも信頼しあえないものだろうか。
そうすれば共闘できそうなのに、気質の違いなのか、
そういう方向に行ってなさそうなのが残念。

ともあれ、この読むのにけっこうな困難を伴う本が、
2007年に3刷まできているというのは、すごいことだと思う。

あとはサーダウィー、読まなくちゃなあ…。

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