こんなに長く投稿しないのは初めてのこと。
アーカイブを見たら、なんと4月から6月まで一本もなし。
理由は主に二つ。
ハンドメイドサイトに登録して日々着物リメイクと撮影と記事投稿に追われていたこと。
もうひとつは友人のケアとサポート。
これは事情のあることでもあるし、書くのも面倒くさいので割愛
(一言だけ:もういいかげん抜けたい)。
7月3日の朝日新聞で、(2030 SDGsで変える)捨てられる新品の服「年10億点」 在庫処分業者「600社が持ち込み」という記事が目に留まった。一面トップ。二面でも追っている。一面トップにふさわしいかどうかは判断が分かれるだろうけれど、私は興味深く読んだ。
在庫処分業者によると、定価の10%で買い、ブランドタグをはずし、17~18%でやっと売れるという。でも、全ての服が市場に戻れるわけではない。
そのまま捨てられてしまう服も少なくない。東京都内の産業廃棄物処理業者は、銀座に店を出す有名ブランドから売れ残った商品の処理を依頼された。「洋服のほか、靴やカバンなど収集車3台分。すべて破砕して焼却してほしいと言われた」。1点ずつ処分の証拠写真も求められた。「横流しされるとブランドが傷つく恐れがあるし、倉庫に保管すれば資産となり税金がかかる。だからあえて焼却する」
要は作りすぎである。だが、ブランド服はまだ良い。二面では、低価格で大量に出回り、大量に売れ残る服の、ブラックな背景があぶりだされている。主にネットで売られているプチプラの洋服。私も買ったことがある。レギンズ二本で980円とか。
2000年代以降、安くて流行を押さえた「ファストファッション」が定着し、消費者はお金をかけずにおしゃれを楽しめるようになった。ネット通販も広がり、経済産業省が6月に公表した資料によると、国内の衣料品の供給量はバブル期の約20億点から20年で約40億点に倍増した。一方、家計の衣料品の購入単価は約6割に減った。
競争が激しくなり、メーカーは費用を抑えようと人件費の安いバングラデシュなどに発注するようになった。業界の事情に詳しい小島ファッションマーケティングの小島健輔代表は「これらの国の工場は、技術がなくても働けるように作業を細分化し、規模を大きくしている。メーカーは大量に発注する必要があり、売れる数はそこまで増えていないのに、供給量が大幅に増えた」と分析する。
「他の業者も似たような商品を出せば大量に売れ残るが、半年から数カ月前に発注しているため、途中で減らすのは難しい。売れ残れば、製造コストの安さは帳消しになってしまう」
そのしわ寄せは働く人たちに向かい、低賃金と長時間労働につながる。
こういう服と価格競争をする国内メーカーはどうかというと、技能実習生を雇う。最低賃金を下回る自給400円で。それでも海外との競争には勝てず、給料未払いになり倒産。
日本にはすでに外国人労働者が相当数入っているけれど、彼らのための法制度がきちんと整えられていない。去年だったか一昨年だったか難民受け入れに消極的な日本について、外国人記者が安部首相に質問したことがあった。首相は、移民労働者を入れる前に女性や高齢者を活用する、という趣旨の(おとくいの)ずらし話法で答えた。
質問した記者は、質問の内容を理解できないのか、あるいは意図的だとしたらなんと不誠実な答えだとあきれたと思うが、ここには重大なウソ、ごまかしもまぎれこんでいる。日本は難民認定はむちゃくちゃ厳しいけれど、移民労働者は技能実習生という名目で相当数入ってきているのである。
女性活用も高齢者活用もいいけれど、自給400円ではだれも働いてくれない。だがこれは、一面の真実でしかない。実は日本にも、400円かそれ以下の現場がある。
以前旅行サイトの投稿記事のことを書いた。ライターの友人が、シロウトが1本数百円で記事を書くようになって、プロの仕事が減り、かつ大幅に値崩れしたと嘆いていた。結局友人は安くても書いているし、私もモチベーションがあがらないまま、しぶしぶ投稿している。
ハンドメイドもしかり。ブラウス一枚2,800円。販売手数料を引き、材料代を引いた粗利はいくらだろう。で、自給は?
(日本のある縫製業者の言葉として)「メーカーも消費者も、もの作りにどれだけのコストがかかるのか考えてほしい。服の値段が安くなる陰で、誰かが泣いている」
「ファッション・ビジネス」という言葉を日本に紹介した尾原蓉子(おはらようこ)さんは「安い商品を大量に作り、大量廃棄する手法をいつまでも続けることはできない」と話す。ファッション事業に長年携わってきた経験から「消費者も、安さだけではなく『適正に作られているか』に関心を持つようになっている。企業が生き残るためには、働く人や地球環境にとってもよい方法をどうやったら実現できるか、真剣に考える必要がある」と警鐘を鳴らす。
◇国連が2015.年に採択した「持続可能な開発目標」(SDGs〈エスディージーズ〉)では、商品などをつくる生産者と購入する消費者に対して「つくる責任、つかう責任」(目標12)を提唱しています。
私が登録しているサイトには、最初から「プチプラとの勝負はしません」価格で出している作品もあって、センスの良いものはそれでも売れている(ように見える)。けれども、売れなきゃ自給ゼロ、どころかマイナスである。安くすれば(それなりに)売れるだろうし、明らかに売れる価格設定にしているショップもあって、プチプラとの競争からそうは簡単に逃れられそうもない。
外国人労働者の待遇や賃金のブラックさが問題なのは、それが彼らの人権問題であるだけでなく、この国の労働現場のブラックさがやがてその水準に引き下ろされるからである。一人経営者で一人作業員の家庭ワーカーもしかり。
技能実習生の問題はそれでも目に見えるし、認知もされている。一方で、その昔「内職」と呼ばれていた家庭ワーカーのブラックさは、目に見えないところで進行している。おそらくは、多くの従事者たちにその認識もないままに。
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