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モロッコ:旅の安全対策実践編 — 「たびレジ」と現地の様子、その後の情報も少し

モロッコ ラバト空港に至る車窓から いたるところにモロッコの国旗
ラバト空港に至る車窓から いたるところにモロッコの国旗が立てられている

10月から11月初めにかけてモロッコをうろついてきた。
最大の目的は砂漠で行われる Taragalte Festival である。

心配だったのは、イラクで始まったISからのモスル奪還作戦や、シリアのアレッポ攻撃であった。これらに対する抗議の意味で、IS(帰還戦闘員やシンパ)のテロもあり得る。ただし、その懸念はモロッコだけでなく、ヨーロッパや周辺国等ISに参加者がいる国にも同様にあるわけで、ヨーロッパに平気ででかけていくのならモロッコも同様であろう、というのが私の認識であった。

昨年は帰国後に安全対策について反省点も浮かび上がったので、今年はそのうちの一つ、「たびレジ」に登録してみた。それがどう機能したのか、実際に役に立ったのか、などを書き留めておこう。

何を登録するか

「たびレジ」とは外務省が海外渡航者向けに行っている情報提供サービスで、在外公館などから(大使館や外務省HPで公表される)緊急時情報が、登録したメール宛に届くというもの。

登録はこちらから 行う。

メールアドレスが三つまで登録できるほか、同行者の情報も登録できる。
ここに旅行予定を追加して行く。

今回は宿泊地の4都市4ホテルを登録した。安全と危険は地域ごとに大きく異なる。不穏な動きが予想されるのはどこか、が非常に重要だからだ。例えばエジプトであれば、何日の何時にカイロのタハリール広場でデモが予定されている、というようなピンポイントの情報であり、それを的確なタイミングで受け取る必要がある。もっと大雑把な登録でもモロッコ全域の情報を出してくれるのかもしれないが、どうせ利用するのなら、きちんと地域や都市を入力しておく方が良いだろうと判断した。

少し悩んだのが携帯番号である。国際ローミングで日本の携帯番号が生きている向きには問題ない。SMSを利用するとしておけば、SMSでも届くのだろう。

が、私の場合現地のSIMを入れてしまうので、日本の携帯番号はその間休眠となる。仕方なく、常に生きているIP電話050plusの番号を登録したが、考えてみたら050にSMSは届かないのであった。

これには、SIMを入れた後モロッコの携帯電話番号に登録しなおす、という方法があった(やらなかったが)。また、同行者の携帯番号が生きている場合は、同行者情報に入れておくのは良いと思う。

どんな情報が届いたか

11日間で6通のメールを受信した。5通は在モロッコ大使館の二つのアドレス(異なる部署、担当者?)から、1通は外務省からであった。
タイトルは以下。

①在モロッコ大使館からの注意喚起(過激主義者の逮捕)
②在モロッコ大使館からの注意喚起(デモへの注意喚起)
③在モロッコ大使館からの注意喚起(サッカーW杯予選)
④在モロッコ大使館(夏時間終了10月30日(日)午前3時)
⑤在モロッコ大使館(フーリガンによる負傷者の発生)
⑥【広域情報】イスラム過激派組織「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」指導者の声明発出に伴う注意喚起(→これのみ外務省から)

④など、かゆいところに手の届く情報で、さすが日本大使館である。列車や飛行機に乗る場合は気を引き締めるに有益であろう。

最初に①を確認したのは28日の夜。

概要:24日、ラバトとメクネスとの間でIS支持者一名が逮捕された、彼は「重要施設に対し自爆攻撃を実施するため,爆発物の製造及び準備に大きな関心を寄せていた」。「家宅捜査により容疑者の過激志向が確認されており,爆発物製造準備のための化学物質の配合レシピを含む文書,電線,電圧計及び疑わしい物質の入ったビンが押収された」。

最後の3日間をラバトで過ごす予定だったので、気になる情報だった。「テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関係施設,モスクや教会等の宗教関連施設,公共交通機関,観光施設,ショッピングセンターや市場など不特定多数が集まる場所)は可能な限り避けよ」とあるが、予定通り国内線と列車を乗り継いで移動しないわけにはいかず、目的は観光だし、メディナのショッピングも楽しみであるからして、このアドバイスを忠実に実行するのは不可能である。

それでも、アメリカ大使館やショッピングセンターには近づかないようにしよう、などと、ラバトの地図を眺めながらそれなりの決意はしたのであった。ところが、ラバトでは知らずに軍(治安)関連施設の前を通ってしまい、軍服を着た人たちがごっそり車で出ていくところに遭遇したりした。地図にアメリカ大使館はあっても、軍施設はないのだから、これは避けようがない。

そのアメリカ大使館も、今地図で確認してみれば、タクシーで前を通っていた。近づかないようにしようという決意は、一応しておいた方がよいとは思うが、かように役に立たない場合もある。

今回は砂漠のフェスティバル会場でも軍服を着た人が多いように感じだ。またラバトでもメディナ内やカスバの外壁の周辺、ムハンマド5世の霊廟の前など、あちこちで自動小銃を抱えた三人組に遭遇した。迷彩服と銃が、観光客や市民や投げ銭を求めるグナワ奏者の隣にあった。

②は、10月28日にモロッコ北部で起きた「魚の行商人が所有していたメカジキを押収した当局との対立の後,この行商人がゴミ収集車内で圧死した」事件に対し、30日にマラケシュ、カサブランカ、ラバトでデモが起き、11月2日にもラバトでデモが予定されている、というものだった。

抜粋:当日は,ラバトのメディナやサントルビル周辺の一帯が騒じょう状態となり、当該地区周辺の道路が閉鎖される可能性もあります。さらに,ラバトのみならず,各地方においてもデモや抗議活動が活発になる可能性がありますので,このような不測の事態に巻き込まれることを避けるため,周辺地区やモロッコ人の群集には近づかない,最新の関連情報の入手に努めるなど,細心の注意を払うようにしてください。

この日はムハンマド五世霊廟や古代ローマ遺跡シェラをタクシーで廻る予定だった。「騒じょう状態」もだが、気になったのは交通規制である。イタリアでしばしば行われるデモや集会では、町や道路がブロックされ、タクシー移動が大変難儀となる。これに何回か遭遇していたので、言葉の通じないタクシー利用に不安があった。

滞在先(メディナ内のリアド)のレセプションに相談してみると、まったく心配ないと断言された。そのときのマネージャーの説明。

概要:行商人の死はまことに気の毒な、可哀想なことであった。けれども彼は、持っていた魚が禁漁魚であったことと、魚を乗せていた車が許されたものでなかった(冷蔵設備の不備とか ?)ことで、二つの違反を犯していた。押収された魚をとり戻そうとしてゴミ回収車に巻き込まれてしまった。これは事件ではなく事故である。

モロッコには、どのようなことでも利用して問題化しようとする人々が入り込んでいる。モロッコの人たちはそのことをよくわかっている。だから今回のデモは、あったとしても大がかりなものではなく、(観光に)ほとんど影響はない。

「一帯が騒じょう状態となり…」という大使館の認識とは随分違う。実際にはマネージャーの言葉通りタクシーはスムーズに走り、車窓から二つの小さなデモと集会を目にしたけれど、いずれも数十人の穏便な雰囲気のものだった。

もちろん、「役に立たなかった」ことは良いことで、この情報がなければマネージャーに問うことも無く、現場での感触や状況判断を知ることもなかった。こういうことは、知らないより知っていた方がはるかに良い。

情報が無くても注意が必要なこと

上記二つは、政治的・社会的に問題視される事件であり、状況により流動的で、その意味では情報の量と質と受け取るタイミングが重要だ。これとは別に、③と⑤は、事前に情報が無くても現場で判断できる類のことである。

サッカーの国内リーグではフーリガン同士の対立で死者まで出ているという。日本では家族連れでも可能なサッカー観戦だが、ヨーロッパでは趣が異なる。サッカー観戦は男たちの専売特許で、荒くれ者が事件を起こすことから、女性や子供は寄り付かない。モロッコも同様らしい。観光客はサッカー場になど行かないだろうけれど、街中のカフェやレストランに集って観戦していたりするので、やはり注意は必要である。

これと関係があるかどうかわからないけれど、今回砂漠で、小さなもめごとを目撃した。

砂漠で行われるコンサートは、寝そべって聞いていたりする人もいるまったりしたものだが、ステージ前は違う。本来は関係者だけが立ち入ることを許されるゲーテッドスペースになっているのに、いつのまにかわらわらと人が入る。ある程度は大目に見られているのだ。私と友人も一日は隙間から入り、もう一日は、日本から来たのかい、それならどうぞ、などと許可を得てステージ前に陣取った。

ステージ前は座るよう指示されるのだが、人気グループに総立ちになるのを誰も止められない。日本と少し異なるのは、ステージに背を向け、自分たちだけで向き合い、あるいは輪になって踊っている人々がいることだ。あんたたち、ステージ見ないなら後ろの砂漠で踊りなよ、と言いたいところだが、(これも日本と違って)周りも寛容である。

なかには酒の匂いをぷんぷんさせている輩もいて、タガが外れてる感もある。概ね無視できる程度ではあるのだが、一瞬異様な雰囲気になったときがあった。ターバンを巻いた若者たちがぞろぞろと大挙してステージ前を仕切る柵から出ていくのである。たまたまこの時、私は柵内の入り口近くにいた。

若者達は皆妙に冷静な顔つきで、しかも戦闘モードに入っていた。そこには、個人的な感情の摩擦というようなものを超えた何かがあった。おそらく二つのグループでもめたあげく、こうなったら外でカタをつけようぜ、ということなのである。外に出たとたん人影に激しくもみあう動きがあったので、ただちにその場を離れた。

コンサートは最終日のトリAzizの非常にテンポの良い、かつ扇情的なリズムによるかけあいで、クライマックスを迎えていた。けんかの行方はその熱狂にかき消えてしまった。警備スタッフに蹴散らされてしまったか、砂漠の丘の向こう側にでも場所を移したのか。エンディングの少し前にステージ前を離れ、砂丘に腰を下ろしてみれば、広い星空の下、不穏な気配はもうどこにもなかった。

ずっと柵の入り口付近にいた友人によると、柵内に入れる入れないの選別を警備スタッフが相当厳しく行っていたようだ。すり抜けて入った一人が走って逃げたのだが、ものすごい勢いで追いかけられ、引きずり出されたりと、かなり剣呑な雰囲気だったという。もめごとが予測されていて、そのための警護が行われていた、ということでもあろう。

興味深かかったのは、厳密に関係者以外をシャットアウトするという警護ではなく、ルーズでアバウトななかに、一定の秩序や規律を持ち込んでいることだ。若者たちが会場の外に出ていくという自制もしかり。スタッフの人数や費用の問題もあるだろうけれど、モロッコ的な対応とも見える。不穏な気配に注意を払うことは当然だ。けれども、その隣に存在する、あるいは包摂する、緩やかな秩序や規律の存在も感じ取っておくと良いと思う。

その後の治安情報

⑥のメールには、外務省海外安全広域情報へのリンクが貼ってあり、内容は、ISの指導者バグダーディーが戦闘員やその同調者にトルコとサウジアラビアでテロを呼びかけた、注意せよ、というものであった。11月22日現在有効である。
イスラム過激派組織「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」指導者の声明発出に伴う注意喚起

さて、魚の行商人の死に関してのデモであるが、気になったのは「アラブの春」の契機となったチュニジアの野菜行商人の事件との類似性である。帰国後チェックしたら野口氏の「中東の窓」も取り上げていた。野口氏のTwitterはリストに入れていたのに、今回時間が十分とれず、チェックから漏れていた。

大規模な抗議運動(モロッコ)2016.11.2
モロッコの抗議運動のその後 2016.11.5

この事件に対して、政府はそれが重大な政治的事件に発展することを防ぐために、素早く異例の措置を取り、国王が内務大臣を遺族の家に弔問に向かわせ、また関係者11名を逮捕し、そのうち8名(内務省関係者2名、魚市場関係者2名、動物医師1名を含む)を拘留している由。
しかし、それにもかかわらず、各地での抗議は収まらず、特に3日には遺体の葬儀の列に続いて、多数の民衆が抗議のスローガンをアラビア語とベルベル語(殺されたのはベルベル人か?)で書いた幕をもって行進した由。

11月13日づけのal-Hayat紙も、モロッコ内務省により IS のテロ細胞が解体されたことと、上記事件のその後の動きを報じている。
モロッコ:「ダーイシュ」のテロ細胞を解体

モロッコが抱えている問題に対してデモや抗議の声があるのは、ある意味健全なことである。テロなどではなく、デモによって問題が解決に向かうのだとしたら、それはむしろ喜ばしいことだ。であるので、デモそのものが市民や観光客にとって暴力的なリスクであると捉えるのは、少し違うと思う。

かといって、大使館の注意喚起を大げさなものと無視するのは問題である。リスク管理には、常に最悪の事態を想定するべきなのだから。と同時に、al-Hayat紙その他の情報からも読み取れる、モロッコ政府の対応が一定の功を奏しているらしいことも頭に置いておこう。

 

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