『イスラム』

◆『イスラム』対話と共生のために ディヤーウッディーン・サルダール メリル・ウィン・デービス 久保儀明・訳 青土社 2005.1 これは読み終わってみると、実に貴重な本だった。 イスラムについての初歩的な解説から、 鋭い今日的な問題提起までを網羅している。 そしてまた、私が知りたいと思っていたことが(特に後半に)書かれていて、 興奮しながら読んだ。 6.イスラムと西洋

十字軍は、その後の植民地主義を予兆するものだった。たとえば、スペインにおいては、キリスト教国がイベリア半島の辺境を支配していたイスラム王朝のムーア人に対して仕掛けた戦闘は、その国から非キリスト教徒を一掃することを目的としていた。あたらに獲得された領土にはキリスト教徒入植者が殺到し、これらの入植者たちは、多くの場合土地使用に関する新たな制度を導入した。先住民であるムーア人はキリスト教への改宗を強要され、改宗は、スペイン人が支配するようになった領土において完全な市民権を手に入れる唯一の手段だった。それ以外の選択肢は全く認めれていなかったのだ。こうした考え方は、アメリカ大陸に渡ったヨーロッパの入植者たちにとって一つのモデルとなったばかりでなく、勃興期を迎えていたヨーロッパ帝国の要石ともなったのである。

つまり、ヨーロッパの植民地主義は、スペイン・ポルトガルにおける レコンキスタと共に始まったのだということ。

ヨーロッパはイスラム世界に足場を確立したのだが、それは一般的に信じられているように、技術と進取の精神において優れていたからでなく、その多くの部分をイスラム文明から獲得した知識に追っている。さらにまた、ヨーロッパの列強が足場を築くことができたのは、それらの国々が、長い歴史を持つ複雑な通商の世界の多様なネットワークに小規模な新参者として参入を黙許されたからに他ならない。 十字軍の精神に端を発しているイデオロギーである植民地主義は、イスラム文明が粗野で圧倒的であり、西欧文明を不倶戴天の敵とみなしているとの認識に裏打ちされていた。客観的に判断すれば、ヨーロッパは、洗練、学識、技術においてさほど高いレヴェルに達していたわけではなく、その点ではイスラム世界と何ら変わりはなかったにもかかわらず、イスラム文明は退廃的で迷信にまみれており、その栄光はあくまで過去のものであって、とりわけ女たちは非文明的な慣習に縛りつけれているといったバカげた考え方は16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの文学において繰り返し用いられたテーマだった。

産業革命—アジアの生産活動をヨーロッパ産業の原料として第一次産品に転換する政策 —交易の拠点都市が植民地経営の拠点に 1880 ベルリン会議でアフリカ分割 植民地を支配した権力は、また、イスラム世界の伝統的教育制度を意図的に破壊した。 イスラムは、このようなヨーロッパの介入に自らのアイデンティティを維持しようとするが、 外圧は伝統の硬直化を招いた。 「発見の時代」 オリエンタリズム

サイードによる、「西欧の学問と西欧の意識を、さらに時代が下っては西欧の帝国主義を登用に押し付けた一連の強圧という枠組みによって形作られた表現のシステム」を用いた「集団的な企て」であり「西欧の経験的内容に基づいてそれ固有の場所を占める東洋理解に甘んじる認識の方法」

これは今なお現役。 ※ 映画とオリエンタリズムのリストに『シェリタリングスカイ』が入っていた…… 15世紀に至るまでイスラムからヨーロッパへ遺産は流れていた。 (両者の)協調の例はスペインで開花したイスラム文明。 =コンピペンシア(共生)=イスラム・キリスト教・ユダヤ教の強制 7.改革運動 ・ワッハーブ→サウジアラビア ・ワリー・アッラー 神秘思想+社会主義 ・ウスマン・ダン・フォディオ(~1818) 西アフリカ 迷信の打破 女たちの偏見にとらわれない姿勢、女たちの教育改革に献身 ・シャマル・アル・ディーン・アル・アフガーニー(1838-1897) サラフィーヤ運動 ・ムスリム同胞団(1920~)サイイド・クトゥブ ナセルとともに革命を担うも後に分裂 逮捕され先鋭化 ・ジャマーアテ・イスラーミー インド・パキスタンで民主的改革を行う 8.現代社会が直面している諸問題 民主主義、女たちの権利、イスラム法、原理主義の台頭と蔓延 新生イスラム国家の権力の座に就いたのは西欧化したエリート 彼らは聖職者層を遠ざけ、伝統的生活慣習を抑圧 →エリートと一般大衆の軋轢 西欧植民地支配が生み出した状況を一新する国家経営の理念を持たず →アフガニスタンのジハード、’79年のイランイスラム革命 原理主義者たちは「イスラム国家」の建設を要求し、一部は武装闘争へ (伝統ではなく、ねつ造された独断的主張、イスラムの多様性を否定) =20世紀–イシュティハード改革派と原理主義に分裂 以下はほとんど転記したくて、面倒なのでページをスキャンした。

p168  p170  p172  p174  p176  p178  p180  p182 p184  p186  p188  p190  p192

  • トップへ戻る
  • カテゴリアーカイブ
  • HOME

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。* は必須項目です。


*