石破官房長官の「デモはテロと同じ」というブログ発言は、
本人も回りも火消しに躍起のようだけれど、
そうかもしれないなあ、と思ったりもする。
そのリクツでやられたら民主国家じゃなくなっちゃうじゃん、と、
秘密保護法案とからめて批判するのは当然のことながら。
最近忙しくて、エジプトもシリアもなかなかチェック出来ない。
ツィートで流れてくる情報も、はてな! にブックマークがたまっていくばかりで、
記事を読みに行けない。
そんな断片ツィートや新聞記事タイトル+リード情報だけではあるが、
ふたつのことが石破発言とシンクロしていると思った。
ひとつはタイのデモ。
タイの人たちは熱いなあ。
前回は空港占拠、今回は首相府である。
ちょっとだけ検索すると、国王誕生日を前に一時停戦との報があった。
首相府周辺では、前日まで2日間、バリケードを突破しようとするデモ隊と催涙弾などで応戦する警官隊の激しい衝突が続き、計192人が負傷していた。反政府デモを率いるステープ元副首相は2日夜、首相府近くの首都圏警察本部の占拠に向かうと宣言。3日は事態のさらなる悪化が懸念されていた。
ところが、首都圏警察本部長は3日、反政府デモ隊に武力で対抗しない方針を表明。デモ隊が警察本部のある通りを行進し始めると、警官らが沿道に列を作り、むしろデモ隊を迎え入れた。デモ参加者らは「警察が人民の側に立った」とバラの花を警官に配った。
デモ隊が入っていった首相府。大型トラックの上からリーダーが「人民の勝利を宣言する」と声を上げた。だが「我々は首相府を封鎖しない」と言い、デモ隊は1時間足らずで首相府から退去し、拠点の民主記念塔に向かった。首相府周辺は静けさを取り戻した。
デモの激化後バンコク郊外に身を移しているインラック首相は3日夕にテレビ演説し、衝突回避について「政府が治安当局に指示した」とし、「状況はまだ正常とは言えないが、前向きな動きだ」と語った。
・タイ衝突、一時停戦 デモ隊が勝利宣言、対立は解消せず (朝日新聞 12/3)
もうひとつはエジプトである。
モルシ/同胞団支持のデモは相変わらず続いている。
大学が始まってからは大学生のデモのニュースが増えてきた。
半年前は反モルシ/同胞団だった若者が、暫定政権の武力弾圧などに批判色を強め、
モルシ/同胞団支持というよりも、反暫定政権に立ち位置を変えた、
そんなふうにも見える。
そして11月半ば、デモ規制法施行。
続いて、デモ主催者らに逮捕命令。
暫定政権が一気に民主化勢力に対する規制と弾圧を強めた形だ。
検察は11月25日、規制法に抗議するデモを違法に組織したとして、反ムバラクのデモで大きな役割を果たした民主化グループ「4月6日運動」の創設者アハマド・マーヘル氏らの逮捕を命令。マーヘル氏は11月30日、当局に出頭したが、反発するデモ隊と治安部隊の衝突が起きた。
平和的なデモでも当局の判断だけで、参加者が大量に逮捕される懸念もあり、「重大な人権侵害につながる恐れがある」(人権団体関係者)との指摘も強い。
また、暫定政権の支持勢力には、選挙基盤が弱く、デモへの参加でかろうじて存在感を示してきた政党も多い。規制法が暫定政権側の政党をさらに弱体化させる可能性もあり、各党の指導者も反対を表明し始めている。
・エジプト、デモ規制法 権威主義傾向、強まる 民主化勢力抑制へ先手 (gooニュース・産経 12/2)「デモ規制法」が導入されたエジプトで28日、2011年の反ムバラク政権運動の象徴の一人だった著名ブロガー、アラ・アブドルファッターハ氏が同法違反容疑で逮捕された。国営中東通信が伝えた。
・デモ規制法違反容疑でブロガーを逮捕 エジプト
(朝日新聞 11/30)エジプト北部アレクサンドリアの裁判所は27日、モルシ前大統領を支持するデモや集会を行ったとして、15~17歳の7人(高校生も)を含む女性21人に最大11年の禁錮刑を言い渡した。
デモ規制法を今週制定した暫定政権の強権体質をあらためて示す例として国内で批判が出ている。
・エジプト、デモの少女らに禁錮刑 (日経 11/28)
数日前、朝日新聞の川上さんが、
反暫定政権のカイロ大学デモ隊がタハリール広場に入った、
5000人規模、とツィートしていた。
今回の政変では、タハリールは一貫して反モルシ・同胞団の集結場所だった。
それが、反暫定政権側のデモ隊がタハリールに入ったのだ。
このところの一連のニュースに、
エジプトの「民主化」は新たな局面を迎えているように思う。
権力は常に腐敗する、と言われる。
同時に、権力は常に独裁化する、とも言える。
ゆえに、独裁化(と暴走)にブレーキをかけるものが必要なのだ。
民主国家とは、そのブレーキが国家システムに組み込まれ、
国民にもブレーキとなるなんらかの手段が保障されている国のことだ。
本質的に独裁志向を内在する権力は、
きっとデモをテロと感じることであろう。
自らにブレーキをかけるそれを、圧殺しようとするのであろう。
そしてまた権力は、自らに権力を与えたものが誰であったのかを、
たやすく忘れてしまうのであろう。
それとも、自らに権力を与えたものたちの目を、
たえず怖れているのか。
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