シリア化学兵器放棄で、アメリカはシリア攻撃を見送る？シリア内線の行方

このタイミングで、こんな手があったのか、
という「化学兵器は国際社会で管理」案がロシアから出された。
すかさずシリアが賛意を示し、オバマ大統領もこれに乗った。
（10日の演説でオバマ大統領は、
「軍事力を使わずに化学兵器の脅威を取り除く手段となる可能性がある」
と述べ、議会にシリア攻撃決議の延期を求めた。）
振り上げたこぶしを体面を傷つけずに下ろせるし、
もちろん国連や西側諸国も賛同。
なんと八方丸く収まりそうな気配である。
と、ここまでのシナリオとしては見事だけれど、この先はどうか？

11万の死者と200万を超える難民が出ている国の内戦が、
こんな鶴の一声みたいなことですんなりと解決されるのだろうか。
それだったらもっと早く、何とかなっていたのではないか。
期待感は募るものの、疑心暗鬼が消えない。

あのシリア（アサド）が、殊勝に従うのか？
軍事介入を遅らせるための時間稼ぎではないのか、という見方は当然ある。
それでも、アメリカ（オバマ）は、
やはり軍事介入したくはないのだ。アフガニスタンとイラクが、
軍事介入は百害あって一利なしのお手本として、今も鼻の先にある。

・米国、シリア攻撃見送る可能性も？　今後のリスクとは
（NewSphere 9/10)

シリア問題は既に、アメリカの財政と大統領生命を危ういものにしており、最大のリスクは対シリア戦略そのものにある、と海外各紙は分析している。

で、軍事介入しなかった場合のリスク。
えーと、これはイスラエルが、っていうことなのかな。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アメリカが軍事介入を実行しなかった場合、イスラエルやエジプトに対するアメリカの影響力が弱まり、イランへの核施設への攻撃に繋がる可能性もある、といった見解を伝えている。

以前、冷泉彰彦氏が Newsweek で、
イスラエルの「挟撃される恐怖心」が暴走すると大変なことになるから、
それを抑えるためにアメリカはシリアをたたくのだ、
というような論を展開していた。
（そのために、反イスラエルのモルシ政権が倒れるのを待っていた、
という文脈だった）

でも、化学兵器が国際管理下に置かれれば、
少なくともサリンを積んだミサイル攻撃にさらされる、
という恐怖はなくなるんじゃないのかな。
（イスラエル、本当にガスマスクを国民に配ってるし）。

気になるのは、反政府側にすでに大量に入り込んでいる、
イスラム過激派勢力のこと。
彼らをハシゴをはずされた状態にしないために、
どのような方策がとられるのか。
そもそも化学兵器は、反政府勢力側も持っているのではないか。
としたらそれも国際管理下に置かなければ筋が通らないけれど、
はたしてそれは可能か。それがなされないことを口実に、
あるいは他国が化学兵器を保持していること（の可能性）を口実に、
アサド政権が強硬姿勢に戻ることもあり得る。
ことは核と同じように（開発が容易なだけにある意味始末が悪い）
微妙で繊細な、しかもダブルスタンダードな問題なのだと思う。

もう一つの懸念は、シリアを囲む中東のパワーバランスについて。
反政府側に過激派を送り込み、武器と資金を供与してきた国々の思惑である。
サウジアラビアとか、カタールとか、トルコとか。
・シリア：わずかに見えた政治解決の明かり（水口章氏のブログ 9/11）